第9話 驚きの事実と気づかぬ予感
――――! いつのまに? びっくりしたぁ……
突然の彼の登場に驚く。
音は聞こえなかったから、たぶん転移魔法で来たんだろうな……心臓に悪いよ、全く。
にしても、「私を困らせるな」って……? この抱きついている状態のこと?
ものすごく柔らかいものが体に当たってるけど、別に困ってるわけじゃ……
「だ、だってさ、兄さん! アオイが、アオイがクニムラの手帳読んでくれるって! あの魔法が使えるなら天魔なんて簡単に倒せるよ!」
マリナが心底嬉しそうな声で言う。
魔法薬の効果が切れたのか、透明化は解除されていた。
――――ええっ! この二人、兄妹だったの!? その割には雰囲気違いすぎるな……あの彼はどっちかっていうとクール系なのに、マリナはその逆だし。外見もあんまり……あ、でも、瞳の色は一緒だな。ダークブルーの瞳。すごく綺麗……
「だとしても、いきなり抱きつくのはやめろ。驚くだろう。」
「兄さんだって抱きあってたじゃん。」
「おい、マリナ! 見てただろ? あれは……」
「兄さんちょっと照れてたよね。珍しいよね。普段はすっごいスタイルのいい、綺麗なおねーさんに言い寄られても眉一つ動かさないくせに。」
彼の言葉をさえぎって、マリナが言う。
その顔にはニヤニヤとした笑みが浮かんでいる。
てか、あの時もマリナに見られてたのか……
うわ、は、恥ずかしい……顔が熱いよ。
「さては兄さん、アオイに一目惚……ムゴッ!」
マリナが続けて何か言いかけたが、彼がマリナの口を手で塞いだので聞き取れなかった。
「……それよりあんた、もう少ししたら王様主催のパーティがあるから、一緒に来てくれないか?」
ムゴームゴーと、苦しげな声を出すマリナを尻目に、彼が私に言う。
その顔が少し赤くなっているように見えたのは、たぶん気のせいだな。
「え、パ、パーティですか? そんな、いいんですか? 私なんかが参加して。」
「何を言うんだ。あんたのためのパーティなんだから、当然だろ?」
――――え、私のためのなの?
「でも、わざわざパーティなんて、そんなの悪いんじゃ……」
「何言ってんのアオイ! あんたのおかげで、この世界に住む人みんなが救われるんだよ! これほど嬉しいことなんてないんだから! パーティくらいさせてよ!」
マリナがにっこり笑って言う。
うーん、本当にいいんだろうか。
でも、せっかくだし……
「……わかりました。じゃあ。」
そういうわけで、私は彼とマリナと一緒に、王様主催のパーティに行くこととなった。




