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プロローグ
唐突にこんなことを言うのもなんだけど、言わせてもらう。
私は、『非現実』が大好きだった。
小説も漫画もアニメもゲームも、現実味をほとんど帯びていないものが好きで、
そのなかでもファンタジー系のものが一番好きだった。
勉強だの部活だの人間関係だのでクタクタになる生活を送っている私にとって、
ファンタジーの世界は一種の清涼剤だった。
……だったら、この状況は喜ぶべきなんだろうか?
ふとそんな考えが頭をよぎる。
けれど、自分が今置かれている状況を思い出した途端、そんなものは一瞬にして消え去った。
喜べるわけないだろ、こんな状況!
脳裏にここ数日の情景が蘇る。
私に今まで起こったことの数々。
いきなり異世界にトリップしたこと。
トリップ先のその世界は、日本語が神様の言語だとされている世界だということ。
それを知らずに、日本語が理解できることを口走ってしまったこと。
そして現在、イエス・キリストばりの救世主扱いをされているということ……
それらは次第に鮮明な映像と化し、私の脳内に映し出されていった。