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事件  作者: 竹仲法順
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第97話

     97

 その日も午後五時には一日の仕事が終わり、刑事課を出て、署外へと歩き出す。疲れが滲む。だが、駅までまっすぐに歩いていった。通りには相変わらず大勢の人間たちがいて、賑やかだ。歩を進めながら、夜空を見上げる。真冬の夜は冷え込む。こういった気候に慣れてはいるのだが……。

 駅から地下鉄に乗り込み、自宅へと舞い戻る。電車に揺られながら、眠気が差すこともあった。やはり気が抜けるのだ。何かしら。スマホを見ながら、ネットニュースを読む。

 自宅マンションに帰り着き、食事と入浴を済ませ、ベッドに潜り込んで眠った。疲れている時は大事を取って休む。基本的に物事に関し、一定の分別があるのだ。危険なことはしない。常にそう言い聞かせている。

 翌朝、午前六時には起き出し、支度をしてから、部屋を出た。このところずっと勤務が単調だ。思う。刑事も大変な仕事だと。だが、職務はきっちり推敲する。怠けものじゃないのだから。テレビの刑事ドラマなどとは訳が違う。本物の警察官ってヤツは。

 午前八時二十分には署に着き、刑事課に入った。パソコンを立ち上げ、ネットに繋いでから、警察の捜査情報サイトを見る。これと言って更新情報はない。このところずっとそうだ。都内はどこでも犯罪の臭いがプンプンするのに……。

 だが、いつも思う。オヤジがどうしようもなく最低最悪の人間だから、俺はその分、生かされるだろうなと。オヤジなどアル中が進行すれば、あっという間に死ぬのである。そういった老人に俺や麗華のような若者の気持ちは分からない。ああ、せいぜい死んでくれといった感じだ。元から相手したくもないのだし。

 刑事課に詰めながら、パソコンに向かう。今日の午前十時過ぎに歌舞伎町で火災があったのはネットで知った。いつもテレビを見ないから、流行遅れになる。吉倉が言っていた。「放火の可能性もあるぞ」と。一体誰が街に火を点けたのか?訝しんでいた。

 確かに放火犯は空気の乾燥する秋冬など、少量のガソリンとライター一本で建物に火を点けることが出来る。組織的犯行なら、悪質だ。

 その日署内で皆が昼食を取り終えて、小一時間経った午後一時頃、九竜興業の構成員、篠崎(しのざき)洋一(よういち)が歌舞伎町の放火容疑で警視庁捜査一課と同組対四課の刑事によって逮捕された。連行される様子がネット上に映る。篠崎容疑者は取調べで一貫して容疑を否認した。「何かの間違いだ」と。何かの間違いで歌舞伎町が焼けるはずがない。共犯と目され、逮捕された樋口(ひぐち)喜佐夫(きさお)容疑者も警察では黙秘を続ける。篠崎と同じくだ。

 おそらく九竜興業が篠崎と樋口を使い、歌舞伎町を焼き払ったのは、恫喝の意図がある。「俺たちが手を回せば、大きな歓楽街一つ焼くのなんて、朝飯前だぞ!」と言わんばかりに……。また警察の仕事が増えた。篠崎らを追及するのは楽じゃない。相手は九竜興業関係者なのだから……。(以下次号)


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