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事件  作者: 竹仲法順
93/230

第93話

     93

 その日も課内にいて、勤務し続けた。一日が終わると、ドッと疲れが出る。呼吸を整えながら、同時に気も抜いていく。署外に出て、新宿の街を歩いた。ネオンが灯り始める頃、街はまた夜の顔を取り戻し、同時に暴走し出す。二面性があり、昼と夜ではその相貌が全く違うのだ。思っていた。夜勤のデカたちも、取り締まるのが大変だろうと。

 自宅に帰り着き、スーツを脱いでから着替えを済ませた。そして夕食を自炊し、食べて風呂場で熱めのシャワーを浴びる。体調を整えないと、出来る仕事も出来ない。痛感していた。そういったことの当たり前さを。

 去年から事件を追っていて、やっと本庁サイドがヤマを拾ってくれた。所轄は手を引いている。おそらく警視庁の捜査員も大変だろう。いろいろと事情もあって。お互い様なのだが、どうしても本店の方が所轄よりも優位な立場になりやすい。まあ、力関係は変わらずにずっと続いているのだが……。

 一夜明け、翌日も通常通り出勤した。午前八時二十分過ぎには刑事課に入る。疲れは溜まっていた。正月気分も抜け、普通にパソコンを立ち上げて仕事する。コーヒーを一杯淹れてカップに口を付けた。苦い。やはりセットしている人間に癖があるのだろう。濃い目に淹れる類の癖が、だ。

 普段のように勤務し始める。吉倉は何も言ってこない。相方も体が鈍っていると思うが、特に口にせず、単にパソコンのディスプレイを見つめながら、タバコを吹かす。煙が隣の席の俺の方にまで来て、煙たい。スーツに煙臭さが移ってしまう。慣れてはいるのだが……。

「井島」

「何?」

「事件が本庁の人間たちに横取りされて、俺たちはすることないよな」

「ああ。……でも、こんな時じゃないと、剣道の稽古とか射撃訓練とかって出来ないよね?」

「まあ、確かにそうだな。……今、午前十一時前だけど、射撃場にでも行く?」

「そうだね。久々だし」

 頷き、自身の拳銃を持って歩き出す。幾分足取りが重いのだが、銃は使ってないと、いざという時、撃てない。射撃で失敗してマル被を取り逃がしたり、事件をパーにしたりは出来ないのだ。慎重さが必要だった。それに未だ自身の刑事人生で人を射殺したことはない。威嚇のため、中空に一発弾丸を放ったことはあったが……。

 射撃場で正午まで訓練した。的から逸れることばかりで、なかなか命中しない。これはいかんなと思いながらも、スコープを嵌めて次々と撃ち続ける。大量の火薬が服に付き、体に残渣してしまっても……。

 訓練が終わり、刑事課に戻って、昼食に出された市販の弁当を食べた。食事を取りながら、思う。今年も一際仕事が大変になりそうだと。まあ、警察官は何かといろんな苦労が重なりがちなのだが……。(以下次号)


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