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事件  作者: 竹仲法順
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第92話

     92

 その日も午後五時まで刑事課に詰めて、一日の仕事が終わると、一息つく。疲れていた。だが、勤務中はデカとしての仕事が常にあり、気を張っている。新宿駅から地下鉄に乗り込み、自宅へと戻った。

 連日寒い日が続くのだが、風邪などを引かないよう、気を付ける。基本的に体は強い。体力には自信があるのだ。こんな冷える季節でも、家に帰れば暖房を付け、熱めのシャワーを浴びて温まる。そして日付が変わる前には眠った。

 翌日も普通に午前六時には起きる。眠気を感じることはない。多少体が重くても、着替えさえすれば、自然と気が引き締まる。そして通常通り出勤した。午前七時半には家を出て、署へと向かう。

 刑事課に入ると、月岡も吉倉もいた。思う。また朝から仕事だと。二件の殺人事件は警視庁のデカたちが捜査担当しているのだが、口出しはしない。警察には力学がある。本庁と所轄は一定の力関係や利権、縄張り争いがあるのだ。それを破ってまで捜査は出来ない。

 コーヒーを一杯淹れて飲みながら、パソコンに向かう。ネットでいろんな情報を把握していた。一般的に言って、刑事事件の捜査は複雑である。警察官もいろいろと迷うことがあった。だが、考えても仕方ないこともたくさんある。吹っ切って仕事に臨んでいた。

 午前九時過ぎには街全体が動き出し、俺たちの仕事も始まった。繁華街は賑わい、歓楽街も夜の顔を消して、朝昼のそれへと変貌する。辺り一帯を人やモノが絶えず流れていく。さすがに朝方の新宿は前夜の眠さを引き摺っている側面もあった。それぐらい、この街は夜活発なのだ。

 おそらく警視庁の捜査員は村上警部補が逃亡した例の島から引き揚げているだろう。無駄足なのだ。いくらあの島を潜伏先だと固執しても、事件が解決するわけじゃない。捜査に従事する刑事なら、誰もがそう思うだろう。それに帰巣本能があれば、ホシはすでに日本に戻ってきている。

 吉倉は勤務中でもタバコを吸いながら、パソコンを睨んでいた。捜査に能がないデカも一応人員だ。それに同じ刑事課の捜査員も、彼を嫌っているわけじゃない。むしろ人間味のある男として、好んで受け入れている方だった。

 また時間が過ぎる。今現在、所轄署には二件の事件に関し、新たな情報は入ってきてない。つまり足踏み状態なのだ。進むことなく、止まったままで。そして俺たち刑事も屋内で内勤をこなす。現段階で考えることはほとんどないのだから……。(以下次号) 


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