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事件  作者: 竹仲法順
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第90話

     90

 その日も午後五時には勤務が終わり、刑事課を出て帰宅した。午後七時前には家に帰り着き、着替えを済ませた後、麗華が今朝作ったサラダを摘まみながら、年越しそばを啜る。気持ちはゆっくりしていた。午前零時を回れば新年だ。また新たな一年が始まる。来たる二〇一六年も忙しくなりそうだった。

 深夜眠りに就いてから、翌朝も午前六時には起き出す。上下ともスーツに着替えを済ませ、コーヒーを一杯飲んでから、カバンを持つ。部屋を出て、最寄りの駅まで歩いていき、新宿方面行きの地下鉄に乗り込んだ。朝で電車内は混雑している。だが、あっという間に都心に抜けた。

「明けましておめでとう。今年もよろしくな」

 署の刑事課に着くと、先にフロアにいた吉倉がそう言ってきたので、

「ああ、おめでとう。こちらこそ、よろしくね」

 と返す。そしてデスクに座り、パソコンを立ち上げて、ネットに繋いだ。夜勤の刑事たちは帰っていきつつある。今日は元日だが、正月気分なしで初仕事だ。刑事課内に交代要員はいないのである。コーヒーを一杯淹れて飲みながら、パソコンに向かい、警視庁の事件捜査関連のサイトを見る。情勢は去年とほとんど変わってない。だが、ホシは逃げつつある。

 歌舞伎町は年明けとあってか、悪い連中がのさばっているようだった。所轄の暴力犯係の刑事だけでなく、警視庁の組対のマル暴も動いた方がいい。本来ならおめでたい新年に、デカたちが駆り出される。気分がよくなることじゃなかった。むしろ、年明けから最悪の雰囲気だろう。

 昼になり、署内で雑煮が振る舞われた。食べてから、元気を付ける。唯一正月らしい気になるのだ。幾分ペースを緩めて。新宿の街は昼からも活況が続く。政府の経済政策で株価が上がり、少しは景気がいいらしい。デカは公務員だが、給料は上がらない。Ⅱ種試験パス組で準キャリアでも、刑事の給料などたかが知れている。 

 食事後もまた、通常通り勤務だ。今年はいいことがあるかどうか分からない。だが、一つ一つ積み上げるようにして仕事をしていきたい、と思っていた。多少ストレスは感じるのだが……。

 元日も時間が過ぎていく。決して戻りはせずに、ずっと。(以下次号)


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