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事件  作者: 竹仲法順
89/230

第89話

     89

 その日も午後五時には一日の勤務が終わり、月岡や吉倉、それに他の警官たちに一言言って、刑事課を出た。外は冷える。明日は大晦日だが、通常通り勤務だ。新宿の街も年末年始は要警戒となる。

 地下鉄に乗って自宅に戻ると、麗華がいた。食事を作ってくれていたようで、

「勇介、お帰り」

 と言ってきた。

「店大丈夫なの?」

「ええ。……今日はママの私用でお休みだから」

「そう?だったらいいけど」

 頷き、部屋でスーツを脱いで、部屋着に着替える。そして彼女の作った料理を食べた。年の瀬でも来てくれるのは嬉しい。その夜、混浴し、熱めのシャワーを浴びた。疲れを落としてしまった後、ベッドで性交する。ゆっくりと交わった。寝物語で、麗華が「今年もあっという間に終わったわね」と言ったので「ああ」と返す。そしてそのまま眠ってしまった。

 翌朝、午前六時に起き出すと、彼女がキッチンに立って、食事を作っている。起き出し、

「おはよう。……俺はコーヒーだけでいいよ」

 と言うと、麗華が、

「じゃあ、サラダたくさん作ったから、今夜にでも食べて」

 と返し、笑顔を見せる。

「ああ、ありがとう。……じゃあ、麗華もよいお年を」

「勇介もね」

 互いにそう言って、俺の方はコーヒーの入ったカップを手に取る。飲んでからカバンを持ち、部屋を出て歩き出す。今夜は大晦日だから、カップめんの年越しそばを一つ買っていた。それを食べながら、独り年越しだ。彼女はさっき「あたし、今日は予定があるから」と言っていたので、一緒に年は越せない。

 その日も午前八時二十分には署に着き、いつも通り勤務する。変わらないのだが、別にいいと思っていた。警官としての仕事は山ほどあるのだから……。

 それにしても、新宿区内で起きた二件の殺人事件は捜査が手間取っている。警視庁の捜査員もあの島を捜索して滞ったら、また別の場所を探すだろう。帰巣本能で、ホシが日本に戻ってきていることも考えているとは思う。まあ、村上も福野富雄も殺人犯だ。どこまで警察を欺き通せるか?事件は捜査が進行中である以上、生ものだ。それに刑事事件に公訴時効はない。デカたちもずっと追い続ける。

 一方で村田たち特捜の検事は警察をターゲットとしている。五億の裏金の件で、だ。思う。岩尾たち上の人間もどこまで追及をかわすだろう?俺や吉倉など、新宿中央署刑事課の人間には降りかかってこないことなのだが……。

 一年が終わる。今夜年越しすれば、また明日元日も年初の勤務があって……。(以下次号)




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