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事件  作者: 竹仲法順
86/230

第86話

     86

 一日が終わり、内心ホッと一息つく。同僚たちに一言言って、刑事課を出てから、署外へと歩いた。街を見ながら、駅まで行く。繁華街は相変わらず人間が多い。思う。新宿の街もデカいなと。街の規模に、常に圧倒されている。

 駅の地下鉄乗り場から、電車に乗り込む。揺られながら、自宅へと向かった。疲れていて、時折眠気が差す。まあ、俺だって人間だ。きつい時は眠る。当たり前のことだった。

 自宅マンションに帰り着き、上下ともスーツを脱いでから、部屋着に着替える。ゆっくりし続けた。帰宅したら、自分の時間だ。もちろん夕食を取り、シャワーを浴びれば、自然と眠くなるのだが……。

 土曜を一日挟み、日曜になる。通常通り、署に出勤し、刑事課に入っていった。吉倉が、

「おはよう、井島」

 と言ってくる。

「ああ、おはよう」

「年末だから、仕事が立て込むよ」

「分かってる。……今日も一日頑張るか」

 そう言ってから、パソコンを立ち上げ、ネットに繋ぐ。そして今現在、警視庁の捜査員が追っている事件の最新情報を仕入れた。島での捜索は難航しているらしい。逃亡中の村上も必死になっているようだ。もちろん、警察の目は誤魔化せないのだし、そこまで甘くない。事件となると、国内の警察も海外の関係者も連携して、綿密な捜査をする。

 その日は朝から課内に詰めていた。年末の新宿は荒れる。特に歌舞伎町はいろんな人間たちが入り混じり、一際物騒になるのだ。九竜興業関係者も出入りしているだろう。警察の定時巡回も限界がある。何せ暴力団相手となると、普通はマル暴が出てくるのだし、俺たちみたいな所轄の刑事課のデカは関わらない。

 昼になり、市販の弁当が配られた。食べながら、一息入れる。勤務中だが、しばらく寛げた。食べ終わり、コーヒーを一杯淹れて飲む。別に取り巻く状況は差して変わらない。相変わらず、街の物騒さを痛感していた。

 食事後、またパソコンに向かい、詰め続ける。月岡も吉倉も他の署員も、ずっとだんまりを決め込んでいた。刑事課内は絶えず電話が鳴り、ファックスやプリンターなどが作動して、神経をやられる。ストレスは過労の原因の一つだ。逃れようがないのだが、とにかくまずは大事を取る。体を壊すと、元も子もないのだから……。

 二件の事件は本庁に横取りされた。検察は水面下で動いている。村田たち特捜は警察上層部が作った五億の裏金に関し、かなりの程度、探りを入れていた。いずれ警視庁や関係部署をガサ入れするのだろう。まあ、俺たち下の人間には直接降りかかってくることじゃない。個々の人間たちにいろいろと思惑があるのだろうが……。

 今年も残りあとわずかだ。そう思い、課内に詰め続けていた。苦痛は苦痛でたくさんある。応分に楽もあるのだが……。(以下次号)


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