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事件  作者: 竹仲法順
80/230

第80話

     80

 その日も午後六時過ぎまで外にいて、署に戻ってくると、ぐったり疲れる。一日が終わり、捜査報告などを付けて、午後七時半を回る頃には署を出、帰宅した。新宿の街は相変わらず騒がしい。それに物騒だ。通りはたくさんの人で溢れ返っている。

 自宅マンションに帰り着き、スーツを脱いで部屋着に着替えてから食事を作った。そして取った後、入浴する。シャワーを浴びて髪や体を洗い、風呂上りに三百五十ミリリットル入りの缶ビールをきっちり一缶飲んだ。午前零時前まで読みかけていた本を読む。そしてベッドに潜り込み、休んだ。

 そして土曜が過ぎ去り、日曜になって、通常通り出勤する。事件を抱える以上、休めない。重責だった。まあ、当然のことだと思っている。警察は常に捜査に動くのだから……。

 署に着き、デスクのパソコンを立ち上げて、警察の捜査関連のサイトを一通り見る。暇はない。チェックし終わり、午前九時過ぎから吉倉と揃って外へと向かう。

「井島」

「何?」

「村上はこの街にいると思う?」

「うーん、どうだろうね。……連日探してるけど、見つからないところを見ると、高飛びでもしたんじゃないかな?」

「その線を疑いたくなるよね」

 吉倉がそう言い、軽く息をつく。だが、一口に高飛びと言っても、捜査範囲は相当広い。海外の警察と警視庁は連携しているのだが、広域捜査となると、厄介になるのだ。こちらも相当数の人員を割く必要性がある。それに仮に被疑者を本庁のデカが捕まえれば、手柄は横取りだ。複雑である。何にも増して……。

 街に出て、歩き続けながら、いろんな場所を見て回る。だが、肝心のホシはいない。まあ、仮に犯人がこの街にいなければ、今やっていること自体、はっきり言って無駄足なのだが……。

 昼になり、街の定食屋で昼食を取った。いつも粗食である。たまには美味しいものでも――と思うのだが、そういったことには金を使わない。それにグルメなどの美食には関心がないのだ。

 食事後、吉倉が、

「地検の村田検事正が警察を立件しようとしてるな。例の裏金の件で」

 と言ったので、「ああ」と言って頷くと、

「気を付けた方がいい。検察は何でもやる気だ」

 と返し、タバコを銜え込んで、火を点けて燻らす。

 食事代を支払い、店を出ると、昼過ぎの街は人通りが絶えない。俺たちもその中に入り込む。歩きながら思った。村上も福野富雄も悪運が強いなと。吉倉はタバコを吸いながら、歩を進めている。デカが歩きタバコしちゃダメだろうと、見ている俺の方がハラハラしていて……。

 厳寒の中、過酷な捜査は続く。目の前の人波と同じく、途切れないで。(以下次号)


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