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事件  作者: 竹仲法順
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第79話

     79

 その日、午後六時を回る頃まで外にいて、署に戻ると、残務をこなした。捜査報告などを付け、何もかもが片付いてから、署を出、新宿の街を歩き出す。クリスマスツリーやイルミネーションなどが飾ってあり、見ると気が紛れる。程なくクリスマスだ。もちろん、普通に仕事なのだが……。

 帰宅して食事を自炊し、取る。そして入浴した。髪や体を洗い、熱めのシャワーを浴びて寛ぐ。疲れていた。足が痛む。さすがに丸一日立ちっぱなしだと、きつい。風呂場で軽くマッサージして、ほぐす。

 寝室に行き、髪をタオルで拭きながら一息ついた。確かに毎日捜査疲れだ。吉倉と組み、新宿の街を見て回る。暇なく、だ。いつまでこんなことを続ければいいのか?心の奥底でそう思っていた。半面、いつかは終わるだろうなと感じながらも……。

 また一夜が明け、新たな一日が始まる。午前六時には起き出し、キッチンでコーヒーを一杯淹れて飲んだ後、上下ともスーツに着替えた。コートを羽織り、カバンを持って、午前七時半には自宅マンションを出る。地下鉄に乗り込み、署へと向かった。ラッシュに巻き込まれながらも、午前八時二十分には着く。

 吉倉と会ったので、

「おはよう」

 と言うと、相方も「ああ、おはよう」と返す。互いに心のうちは通じ合っていた。長い間コンビを組んでいるからだ。そしてデスクでパソコンを立ち上げた直後から、すぐに外回りの時間となる。署を出て、外を歩く。とにかくぼんやりする時間がない。

 午前中ずっと新宿の各所を捜索し続けた。きついのだが、引き返すわけにはいかない。逃げられないから、目の前のことに真摯に向き合う。吉倉もそうだ。刑事は確かにハードワークである。知力も体力もフルに使うのだから……。

 街の定食屋で昼食を取り、食事後、外に出た。空腹を覚えていた時飲む味噌汁は、実に美味い。いつも和食が多かった。別に得てして選んでいるわけじゃないのだが、どうしても和風の食事の方がよくなる。

 午後も街を歩き続ける。若干疲労はあったのだが、平気だ。吉倉がタバコを吸いながら、俺と並んで歩く。歩きタバコはこの男の悪い癖なのである。治らないだろう。諦めていた。

 合間にスマホに付いているGPSなどを見ながら、位置情報を確認する。もう捜査に紙の地図は要らない。ひたすら街を見て回る。あてどなくだが……。

 特捜は俺たち警察の下っ端のことを考えずに、幹部たちを五億の裏金の一件で立件する手筈でいた。村田も、部下の岡倉や韮山などを使い、警察上層部の外堀を埋める。仮に村上を逮捕したら、東川幸生が握っていた裏金の情報もバレて、警察の屋台骨が揺らぐだろう。もちろん、流れから言っても必然だとは思うのだが……。(以下次号)




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