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事件  作者: 竹仲法順
73/230

第73話

     73

 東川幸生殺害のマル被として、警視庁捜査一課の警部補である村上が浮上したことで、俺たち所轄の刑事は行方を突き止める。冬の外気が冷える中、ホシを探す。その日も午後六時を回る頃まで外にいて、殺人犯を追い続けた。

 雑居ビル内の階段で害者を突き落とした後、データの詰まったフラッシュメモリを奪い去ったのはれっきとした犯罪だ。奪ったデータはおそらく警察の裏金の情報だろう。証拠隠滅されたら、それで終わりだが、村上も周到にやるものと目される。

 警察が作った五億の裏金は、上層部の屋台骨をひっくり返すに十分だ。下手に警察が追及されると、下部にまで及ぶ。何としてでも避けたかった。村田たち検察の人間も警察を対象として捜査しているのだし……。

 その日は午後七時過ぎまで署にいて、それから帰宅した。やっと事件が動き始めたので、考えることも増える。忙しくなりそうだ。捜査本部もフル稼働するだろう。低調なことはやってられない。そう思っていた。

 帰宅してから一夜が明け、また朝から通常通り署へと行く。帳場に入っていき、吉倉に、

「おはよう」

 と一言言うと、

「ああ、おはよう」

 と返事が返ってくる。

「今日も外回りだよな?」

「ああ。……村上を捕まえないと、ヤマが解決しない。分かってるよね?」

「うん。きついけど、仕事だしな」

 そう言い、頷いてみせる。吉倉が、

「ここは強行突破するしかないね。一気にな」

 と言って、いったん脱いで椅子の背凭れに掛けていたコートを手に取った。羽織り、

「井島、行くぞ」

 と言葉を重ねる。頷き、共に歩き出す。署の外に出、空を見上げると、冬の日は陰っていた。街はざわついている。ここ新宿は今日も騒がしい。人が流れていて、俺たちもそれに紛れ込む。

 目抜き通りから少し裏手に入ると、ホテルや各種ビルなどが林立していて、捜査員はいない。単に人の流れがそこで途絶えているだけだ。歩き続ける。吉倉もスマホに表示された地図を見ながら歩く。

 昼まで村上を追っていたのだが、見つからない。殺人犯も逃げる時は途方もなく逃げ回る。それを追う警察も大変だ。だが、探し出して締め上げてやる。歩きながら、そう思っていた。ここ新宿も狭いようで、実際は広いのだが……。

 昼になり、区内のラーメン屋で食事を取る。そして午後からも犯人を追い続けた。いろいろあるのだが、やはり刑事はホシを追っている時が一番刑事らしい。見つけたら即逮捕だ。そんなことを感じながら、街を小走り気味で歩いていった。随所に人だかりがあるのだが……。(以下次号) 


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