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事件  作者: 竹仲法順
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第72話

     72

 捜査本部内は幾分ピリピリしているのだが、俺の方はそんなに気を張ってない。平常心で臨む。捜査も膠着していて、警察もこれと言った手を打ててない。だから、緩い流れに乗るつもりでいた。帳場自体に緊張感があっても、気にせずにマイペースで行く。

 午後五時を回り、勤務が終わってから、捜査本部を出た。そのまま、署の外へと歩き出す。街は慌ただしい。上下ともグレーのスーツを着ているのだが、格好はそう目立たない。刑事など、制服警官以外は皆、黒っぽい服を着ている。目抜き通りの人ごみに紛れ込み、歩いていった。

 新宿駅の地下鉄乗り場から、電車に乗り込む。揺られながら、自宅へと戻った。車内は幾分混んでいたのだが、夕方のラッシュだと思い、気に掛けてない。スマホを見ながら、情報収集する。刑事も大変な仕事だ。犯罪取り締まりだけでなく、他にもいろいろとあるので……。

 自宅に帰り着くと、キッチンで食事を作り、食べた。麗華は最近来ない。忙しいのだろう。接客で何かと疲れるのだから……。食事後、入浴して、独りの部屋で本を読む。読みかけていた刑事小説は面白いのだが、午前零時前にはしおりを挟んで閉じ、そのままベッドに潜り込む。

 一晩眠ると、また新たな一日が始まる。ベッドから起き出して、キッチンへと歩いていく。コーヒーを一杯淹れて飲んだ後、着替えも済ませて、必要なものを詰め込んだカバンを持った。部屋を出、最寄りの地下鉄の駅まで歩いていく。何かと焦りがちになるのだが、努めて気を落ち着けた。

 署に入り、刑事課をすり抜けて、捜査本部へと行く。デスクに着き、パソコンの電源ボタンを押して、起動する合間にコーヒーを淹れる。カップに口を付けて飲みながら、いつも通り警察の捜査情報サイトをチェックした。真新しい更新情報があり、北新宿の雑居ビル内の防犯カメラに映っていたのが、警視庁捜査一課の村上警部補だということが判明したらしい。どうやら、村上が東川を転落死と見せかけて殺害したホシのようだ。

 村上は犯行後、随所にあるカメラの死角を縫って進んだようだったが、出入り口のカメラに気付かずに、おぼろげながら姿が映っていた。それを警視庁科捜研の関係者が解析し、村上が東川を葬ったことが判明する。

 だが、村上は行方を晦ませているらしい。事件直後から、欠勤しているようだった。やっぱり殺人など、警官がやってはいけないことをやったから、ドロンしたものと思われる。更新情報を月岡も見たようで、

「よし、村上警部補逮捕で捜査が進むぞ。気を引き締めろ!」

 と言った。

「はい!」

 皆が頷き、答えた後、捜査が急展開する。警察のターゲットは村上と、福野富雄となった。迷う暇はない。その日から俺も吉倉と組み、屋外で村上を探すことになった。

 冬の新宿は冷え込む。スーツの上からコートを羽織り、通りを歩いていった。犯人探しだ。一際大変なのだが……。(以下次号)

 


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