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事件  作者: 竹仲法順
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第68話

     68

 その日も午後五時には勤務が終わり、月岡や吉倉、それに他の捜査員に一言言って、捜査本部を出た。疲れている。署を出て、夕方の新宿の街を歩き出す。繁華街は物騒だ。在日外国人が大勢集まっている。この街も随分とこの手の輩が多くなった。治安は乱れる。警察の取り締まりにも限界があって……。

 駅コンコースの地下鉄乗り場から、電車に乗り込む。揺られながら、自宅へと帰った。明日も仕事なのだが、だいぶ気は楽だ。週末ぐらいは自分の時間を作りたいのだけれど、この事件捜査が終われば、また一段落となる。そう思い、あえて気持ちを入れていた。

 自宅に帰り着き、スーツを脱いで着替えを済ませてから、ゆっくりし始める。自炊して夕食を取り、入浴して疲れを落とす。連日内勤で腕や肩などが痛かったのだが、これも職業病だ。警察官も何かしら持病がある。まあ、気にしないことが一番いいのだが……。

 また一夜明け、翌朝も午前六時には起き出してスーツに着替えた。洗面を済ませた後、コーヒーを一杯淹れて飲み、カバンを持って部屋を出る。時間に余裕を持ち、出勤した。いつも思う。必ず事態はいい方向に向かうと。

 都心のラッシュに巻き込まれた後、署に着いた。すでに夜勤の刑事たちは帰り、日勤のデカたちが署内に入ってきている。帳場に入り、パソコンを立ち上げて勤務開始だ。コーヒーを一杯淹れて飲みながら、警察の捜査関連のサイトを一巡する。

 検察は対警察という路線を張っていた。あの人間たちは不正を暴くためなら、何でもする。令状を取り、どこにでも踏み込んでいくのが常套手法だ。恐ろしい。特捜の捜査は一際震え上がる。避けて通れない。

 五億の裏金は闇から闇へと流されている。出所はどこなのか、分からない。だが、架空口座内で巧妙に処理され、悪用された金だ。おそらく検察は調べ上げるだろう。

 今しばらく、俺たち警察も裏金の件に関し、黙っているつもりでいた。短兵急に事を進めるとまずい。それに二件の殺しのヤマで、新宿区内の全所轄が必死になっている。ひとまず、ここは事件捜査に乗っかるつもりでいた。焦ってもしょうがないので。別に急ぐことはないのだ。地に足を付けて考える。

 昼食の時間になり、大盛りのチャーハンが人数分取られていた。食べながら思う。空腹だと何も出来ないと。栄養を付けて、仕事した方がいい。それにこの捜査本部も形式的に設置されたものに過ぎない。いずれホシが挙がれば、その時はめでたく解散となる。要は俺たちの行く末は外にいる現場の捜査員たちが握っていて、犯人逮捕後は別の方へ舵を切るのだ。その時は検察が警察上層部の人間たちを裏金の件で立件している可能性が極めて大なのだが……。(以下次号)


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