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事件  作者: 竹仲法順
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第65話

     65

 その日も午後五時になると、パソコンを閉じてから、席を立つ。そして月岡や吉倉に一言言い、捜査本部を出てから、歩き出した。疲れている。だが、今日の仕事は終わりだ。また夜の帳が降りてくる。新宿の街を歩いていった。駅方面へと。

 駅コンコースから地下鉄に乗り込み、電車に揺られながら、自宅へと戻る。スマホを見ながら、ネットでいろいろと情報を探った。冬場で幾分関節痛などがある。辛かったが、自然に治るものなので、放っておくつもりでいた。

 自宅に戻ると、スーツから部屋着に着替え、食事と入浴を済ませる。寝る間際に読みかけの刑事小説を開き、読み始めた。字を目で追いながら、しばらくリラックスする。確かに昼間の緊張感と、夜のゆったりした時間は違っていた。明らかに夜の方がいい。だが、そうは言っても、また時は容赦なく朝になるのだが……。

 午前零時には眠り、翌朝午前六時には自然と目が覚めて起き出す。洗面を済ませた後、上下ともスーツに着替えて、コーヒーを一杯飲む。カバンを持ち、午前七時半には部屋を出て、歩いていった。毎日神経が磨り減るような感じだが、仕方ない。やるしかないのだ。デカとしての仕事を。

 ラッシュに巻き込まれながらも、午前八時二十分には出勤する。帳場に入り、職場の仲間たちに「おはよう」と挨拶した後、パソコンを立ち上げた。警察の捜査関連のサイトを見る。ほぼ未更新状態だ。思う。警察も事件に関し、情報は一部しか得ていないと。仕方ない。これが現実だった。

 コーヒーをプラスチック製のカップに一杯淹れて飲む。気を落ち着けた。いろいろあるのだ。考えることが。だが、ある意味、今感じている不安や心配事などは無駄なことである。いずれ自ずと解決するものだ。どんなに事件が入り組んでいても、いつかは決着が付く。だから焦らない。

 捜査本部内で昼食を取った後、軽く息をつく。そしてまた午後からも詰め続けた。暇はない。警察官は激務だ。交番勤務時代から、何かと疲労は感じ取っていた。所轄の刑事課に入り、スーツに身を包むようになってからも、心身ともに疲れていたのだ。

 夏場は暑気に蒸され、冬場になると寒さで凍える。その繰り返しで時が過ぎていった。いざとなればホシを追うのだが、その気力も年々衰えつつある。思う。これが現役刑事の本性であり、実態だと。まあ、俺だってデカである前に一人の人間だ。そう思えば、納得できた。

 パソコンに向かいながら、ずっと詰める。午前中とあまり変わらない状態のまま。(以下次号)


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