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事件  作者: 竹仲法順
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第64話

     64

 その日も署内の捜査本部に詰め続け、午後五時には勤務が終わった。パソコンを閉じて月岡や吉倉、それに他の捜査員に対し、一言言ってから帳場を出る。疲れていた。体が重たい。新宿の街を見ながら、駅へと向かう。気持ちが落ち着かない。何かしらモヤモヤしていた。やはり事件捜査で心労があるからだろう。街の大通りを駅まで突っ切っていく。やや速足で。

 地下鉄に乗って帰宅し、上下ともスーツを脱いでから、部屋着に着替える。そして食事を取り、入浴してから、寝室でゆっくりし始めた。やっと落ち着いたと思うと、もう午前零時だ。ベッドに潜り込み、眠る。朝まで熟睡して日曜を迎えた。

 その日も午前七時半前には家を出て、最寄りの駅から地下鉄に乗り込み、署に出勤する。一日はあっという間に過ぎていった。また一日が終わり、新たな週を迎える。

 月曜の朝、通常通り午前八時二十分過ぎには職場に着いた。吉倉に、

「おはよう」

 と言うと、

「ああ、おはよう」

 と返事が返ってきた。相方も変わってない。あまり事件捜査には能がないのだし、きっと退屈しているのだろう。まあ、別に俺だって相方が大した刑事じゃなくてもよかった。切れ者は相手しにくい。そう思える。

 十一月も終わりが近い。疲労困憊気味で、二件の殺人事件の捜査がどうなるか分からない。だが、着実に言えるのは、いつかは真相が分かるということだ。終わりのない捜査などない。いつかは何らかの形で結論が出る。焦る必要はない。警察もいずれホシを追いこんでいく。

 昼に出前が届き、丼物を一つ食べた。食事時は幾分落ち着く。何せ、外では新宿区内の全所轄の捜査員が角井卓夫を殺害した福野富雄や、東川幸生を転落死させたホシを追い続けている。いろいろとあっても、警察の目的はただ一つ、容疑者を逮捕することだけだ。明白である。難しいことは一つとしてない。

 捜査本部は隣の刑事課と比べると、活発さがない。ここ新宿中央署はいろんな課が並立しているのだが、デカたちは各々の部署でしっかりやっている。思っていた。警察官同士でいろいろあっても、治安を取り締まるという警察のやり方は変わらないのだと。今も昔も全く同じである。

 コーヒーを淹れて飲みながら、考える。きっと地検は特捜を稼働させた以上、対警察ということを標榜し、捜査を進めてくるだろう。何かと物騒なのだが、検事正である村田が会議で部下たちに発破を掛けた以上、警察上層部を追及することは止めないものと目された。これから矢継ぎ早に検察が攻めてくる。油断はならない。あの連中は令状さえ取れば、どんなことでもするのだから……。

 時が経つ。帳場は刑事課ほど物々しさがなく、静まっていた。もちろん、各々パソコンに向かいながら、仕事はしているのだが……。(以下次号)


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