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事件  作者: 竹仲法順
63/230

第63話

     63

 その日も午後五時になり、月岡や吉倉に一言言って、捜査本部を出る。体の芯から疲れきっていた。引き摺るようにして、歩いていく。新宿の街を目にしながら、駅へと向かう。各方面への地下鉄が数分おきに出たり入ったりで、交錯する。慣れていて平気だ。

 スマホを見ながら、配信されてくるニュースを読む。世の中の情勢は急迫している。物騒な事件などが何かと多い。思っていた。あまりいい気はしないと。

 だが、日々警察署に勤務していて、事件捜査に従事していると、感覚が麻痺してくる。俺も派手な立ち回りこそしないのだし、自分のペースでやっている側面が多い。まあ、それはそれで個人の特徴として持っていて、愚直に捜査を行うのだが……。

 東川幸生が階段で転落死させられた北新宿の雑居ビルの防犯カメラの映像は、まだ解析できてないのだろうか?ジレンマがある。あのヤマこそ、今回の事件捜査で一番重点を置くべき代物だ。奪われたフラッシュメモリに詰まっているデータが警察の裏金の実態を証明している。奪い取った側の人間は、きっとそれを隠滅している可能性が高い。悪いじゃ済まされない話だった。殺人が絡んでいるのだから……。

 また一日が過ぎて、新たな日になる。本来なら休日なのだが、通常通り出勤した。地下鉄に乗り、都心へと向かう。冷え込んでいた。悪天候の中、署へと行く。スーツの上からコートを一枚羽織り、街の大通りを歩いた。午前八時十五分頃には帳場に着き、捜査本部内にいる捜査員に朝の挨拶をする。そしてパソコンを立ち上げ、いつものように警察の捜査情報が載るサイトを閲覧した。相変わらず、ほぼ未更新状態だ。やはり現場にいる警察官が足で稼いでも、犯人に関する情報はなかなか挙がらないのだろう。

 その日の午後、特捜の検事は東京地検内で定例会議の席を設け、検事正の村田が水面下で警視庁を捜査対象に据えていることを言った。会議に臨んでいた検察官はそれを聞いて驚いていたが、村田が、

「我々は今後、警察の作った五億円の裏金の件に関し、対警察という形で捜査を続行する。いいな?」

 と言った。皆が一瞬当惑した後、頷き、それから小一時間で定例会議は散会する。そして検事たちが退席する中、村田と岡倉、韮山が話をしていた。三人で固まり、会議場が閑散とした後も話し続ける。対警察捜査――、やはり意想外だった。すでに他に複数名の検事たちが水面下で動いている。何とか事件を解決したい。そういった気持ちの表れだった。検察が警察の不正を暴くこと自体、前代未聞とも言うべき事柄なのだが……。

 外は冷える。外回りする捜査員は辛いだろう。察していた。もちろん、内勤は内勤で過剰なストレス等が掛かり、疲れるのだが……。(以下次号)


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