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事件  作者: 竹仲法順
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第57話

     57

 どうも月岡の態度が気になる。縁の下での特捜の動きは、警察の上の人間たちの間では筒抜けになっていたはずだ。署長の綾瀬が告げる前にすでに知っていた可能性が高い。まあ、生身の人間の心の中など、およそ他人には知りようがないのだが……。

 そしてまた一日が過ぎ、週末も近くなる。事件捜査で仕事は休めないのだが、土日は何となくホッとするのだ。気分的に落ち着いて、である。今までいろんな刑事事件の捜査に従事してきたが、今回の事件は一際大きい。それに特捜がアンダーグランドで動くとなると、より一層身が引き締まる。

 村田とは面識がないのだが、新聞などでは見たことがあったから、顔や経歴などは知っていた。地検の検事正というのは、その部署の上級検事ということだ。主任でいろんな権利を持っている。確か年齢は五十代半ばで、キャリアの役人だから、定年後は法曹関係のいろんな部署に天下りや渡りなどを繰り返すだろう。まさに雲の上の人だった。

 岩尾警視総監も言わずもがなでキャリア組の警察官だ。以前、警察官の剣道の全国大会で主賓の席に座っていたから、顔は分かっていた。ふてぶてしい感じの男性で、あまりいいイメージはない。常に何かを考え、画策している。そういった男だった。

 仮に岩尾が村田に言ったように、事実関係を何も知らないとなると、五億の裏金は誰がどこにどう流したのだろう?まさに闇の金ということになる。額面は少ないのだが、警察官が公金を使い回したことは大問題になるのだ。思っていた。知らないわけがないと。

 金曜も朝から捜査本部に詰めた。所轄に配属されている外回り担当の捜査員は皆、必死になって福野富雄や、東川幸生を殺害したホシを追っているだろう。事件が急展開することがなかったにしても、わずかな手がかりなどを元に犯人を追うデカたちの態度は真摯だ。彼ら・彼女らの働きは認めるしかない。拙速ではあっても……。

 胃の調子は元に戻りつつあった。一応コーヒーは食後に一杯と決めている。疲れはあった。慢性的に体が重たい。椅子に座ったままで、足腰が痛む。刑事はテレビドラマや映画などで見るほどタフじゃないのだ。ああいったスクリーンでは大いに脚色がある。本来的にデカは地味なのだった。上下とも黒服姿で、いかにもそういった格好をしていても……。

 それにしても村田が警察の不正を摘発するため、率いる特捜を動かすとは。並じゃない。そう来たかと思ってしまう。どうやら裏金の件で警察関係者が東川を殺害し、口を封じたと目された。となると、事件当日の犯行時間帯に現場である北新宿の雑居ビルに出入りした警官が犯人ということになる。刑事が人を殺すなど考えにくく、不気味だったが……。(以下次号)


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