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事件  作者: 竹仲法順
49/230

第49話

     49

 その日も午後の時間が過ぎ、事件捜査に関してはこれと言って進展のないまま、午後五時になった。月岡や吉倉に一言言って捜査本部を出る。疲れていた。夕方の新宿の街を歩きながら、目抜き通りを見る。人の洪水だった。日々この街で警察官として仕事をしていると、自然と身も心も街の色に染まる。

 地下鉄を乗り継いで帰宅し、独りの部屋でゆっくりする。スーツは何着か持っているのだが、定期的にクリーニングに出す程度で、普段からずっと着っぱなしだ。別にスーツはお洒落着じゃないのだから、着れるものを着ている。ワイシャツはきちんと洗濯するのだが……。

 その夜も午後十時前に入浴してから、その後、読書して午前零時過ぎには眠った。すぐに寝てしまって、翌日も午前六時には起き出す。新たな一日が始まったと思い、起きてからコーヒーを一杯淹れる。仕事着に着替えた後、スマホを手に取り、ニュースを読みながら頭の中を入れ替えた。カバンを持ち、出勤する。

 都内は朝のラッシュだ。電車に乗り込み、揺られながら、都心へと向かう。新宿駅に降り立ち、署へと歩いていった。体は鈍っている。剣道などの鍛錬をしてないから、腹回りにちょっと贅肉が付き掛けていた。そう気にしてはないのだが……。

 帳場に着き、中に入ると、月岡も吉倉もいた。「おはようございます」と朝の挨拶をしてから、自分のデスクに着き、パソコンを起動させる。立ち上がった後、ネットに繋ぎ、いつも通り警察関係のサイトを見た。ほぼ未更新状態で、新しい情報が入ってないことが分かる。そのまま、じっと画面を見た。幾分チラつく目を気にしながら……。

 警察の五億の裏金の件は、誰も口に出さない。当たり前といえば当たり前だ。組織の中で一部の人間が公金を悪用するなど、言語道断だからである。汚点は拭い去れない。信用問題に係わる。いずれ警察上層部がこの件を釈明する必要がある。疑惑が表に出た場合は、だが……。

 午前中も変わらずに、ずっと詰めていた。確かに変化はない。事件の局面が切り替わる時は、警視庁職員全体に何かしらの通知があるだろう。思っていた。焦ることはないと。実際、当の捜査員である俺も自分に言い聞かせ、気を落ち着かせていた。そういった努力は絶えずしている。少しでも何かの役に立てば、と思い。

 そして今日もこの所轄は慌ただしい。殺人の案件を抱え込み、ずっとピリピリしている。ストレスで胃腸の調子が悪かった。食事の後、胃腸薬を飲む。疲労はいろんなところに出ていた。何とか乗り切ろう。自分に対し、そう励みの言葉を掛ける。必ず事態が好転すると思っていて……。

 警察が福野富雄と、ヤツの所属する九竜興業への本格的な捜査を始めたようだ。以前よりも本腰を入れて、である。(以下次号)


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