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事件  作者: 竹仲法順
40/230

第40話

     40

 午後五時を回り、夜勤の刑事たちが入ってきたので、管理官席に座っている月岡に一言「お先します」と言って一礼し、捜査本部を出て歩き出す。やはり気分は優れない。思う。デカはハードワークだと。だが、そう気に掛け続けているわけでもない。実際、公務員という仕事を選んでよかった。一般企業などに入っても、勤まるわけがないからである。それだけ不器用なのだった。

 ふっと歌舞伎町交番に足を運んでみる。篠田がいて、

「ああ、井島巡査部長。お疲れ様です」

 と言ってきた。

「君も大変だね。独りで戦ってるんだから」

「慣れましたよ。交番勤務も警察官の仕事ですから」

「また歌舞伎町が荒れたら、いつでも言ってきて。俺も吉倉も所轄のデカだけど、応援に行くよ」

「ありがとうございます」

 篠田が一礼し、頭を上げた後、敬礼して俺を見送る。俺の方も一礼し、まっすぐに歩き出す。新宿駅はすぐそこだ。地下鉄のコンコースへと向かう。

 やってきた電車に乗り込み、揺られた。通勤に要する時間は、片道がほんの二、三十分程度で楽だ。朝は都心方面への通勤ラッシュに巻き込まれるのだが……。

 その夜も一人の部屋に帰り着き、着替えを済ませてから、食事を作った。食べながら、しばらく寛ぐ。夕食時と入浴時が一番落ち着くのだ。ゆっくり出来て。まあ、事件捜査があってもマイペースさは崩さないでいる。それだけ仕事慣れしているのだ。常に世の悪と向き合うのを本分としていて……。

 午後十一時を回る頃にシャワーを浴びて、髪や体を洗い、風呂上りにビールを一缶飲んだ。寝室に入っていき、ベッドに潜り込む。ゴロゴロしているうちに眠気が来て、そのまま眠ってしまった。

 翌朝、午前六時に自然と目が覚めて起き出し、寝床を出てから、上下ともスーツに着替える。キッチンでコーヒーを一杯淹れて飲んだ後、必要なものを詰めたカバンを持ち、すぐに出勤した。何かしらモヤモヤはあったのだが、そのまま署へと向かう。

 午前八時頃、署に着くと、月岡も吉倉もいた。「おはようございます」と朝の挨拶をして、デスクのパソコンの電源ボタンを押し、起動する合間にプラスチック製のカップにコーヒーを淹れる。飲みながら、ディスプレイを見た。警察の捜査情報サイトや警視庁のデータベースなどを一通りチェックする。特に更新されてなかった。

 その日も空振りで終わりそうな気がしていた。福野富雄も、東川幸生を殺害したホシも逃げ続けていて……。警察の公開捜査の間隙を縫って逃げているのだから、図太い。どこかしらで捜査員と接触している可能性だってゼロとは言えないのに……。考えれば考えるほど、不可解な事件だった。まるで警察サイドが踊らされているようで……。(以下次号)


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