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事件  作者: 竹仲法順
37/230

第37話

     37

 その日も時間が過ぎて、午後五時を回り、捜査本部を出る。疲れはあった。だが、土日も返上だ。とにかく毎日詰め続ける。捜査に関し、進展はなくともずっと帳場にいた。暇はない。もちろん、食事休憩時は気を抜くのだが……。

 新宿の街を行ったり来たりする。連日晴れ渡り、いい天気が続いていた。朝と夕方、街を歩きながら、行き交う人を見る。都心は絶えず混雑するのだし、大人数いるから、目が合っても一々気にせず、知らんぷりで通りすがる。

 それにしても、福野富雄はどこに逃げているのか?そして東川幸生をビルの階段から転落死させた犯人は一体何者なのか?気になる。刑事にとって事件というものは、そうあってほしくない代物だ。実際、俺も長年警察官で刑事事件などにたくさん遭遇してきたのだが、解決してない案件もある。殺人事件の公訴時効の撤廃で、お宮という言葉は死語になったのだが、やはり警察社会にも未解決のヤマはいくらでもあった。

 土曜を経て、日曜になり、通常通り署に行く。殺人事件の捜査本部はずっと開いていて、そこにいるデカたちは常に外部からの情報などを掻き集める算段に出る。警察の努力は勤勉さに尽きるのだ。俺だってそんな人間の一人だった。日々捜査に尽力する。いろいろあったとしても……。

 その日も朝から詰めていた。プラスチック製のカップにコーヒーを一杯淹れて飲みながら、パソコンのディスプレイに見入る。目はドライアイ気味で、視界がぼやけることがあった。時折、市販の目薬などを差す。体調の変動は目だけで済んでいた。

 日曜の昼は仕事がなければ、自宅でゴロゴロするのだが、事件解決までずっと勤務になりそうだ。思う。疲れると。葛藤などもたくさんあるのだ。目の前のことが解決せずに。とにかく二件の事件に関し、一刻も早く捜査を終了させる必要性がある。刑事事件は時と共に色褪せるのだから……。

 歌舞伎町は昼間から騒がしい。篠田は頑張っているだろうか?あの青年も交番勤務を経れば、いずれは黒服姿の刑事になるだろうが……。

 新宿の街は常に乱れている。ここが繁華街であるから、仕方ない。街を歩く人間たちは急ぎ足だ。何かと忙しいのだろう。この騒々しさが十月下旬である今ぐらいから、年末まで続く。街は秋冬一色に染まるのだ。皆、長袖の服に重ね着をして。

 その日も昼食を出前の丼物で取り終え、午後からも詰める。事件発生から一定期間経て、ヤマは膠着していた。何かしら疲れる。捜査本部には月岡や吉倉、それに他に捜査員が数名詰めていた。皆、パソコンに目を落としながら、幾分憔悴気味である。思っていた。何か打開策はないかと。二件の殺人事件が北新宿の雑居ビルというものを媒介にして繋がっている以上、犯人側が次の事件を仕掛けてくる可能性もあった。あくまで可能性なのだが……。(以下次号)


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