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事件  作者: 竹仲法順
35/230

第35話

     35

 時間は過ぎていく。それと共に、事件も色あせる。ずっと内勤が続いていて、体が鈍ってしまう。時折席を立ち、フロア隅のコーヒーメーカーでコーヒーを淹れた。眠気覚ましだ。何かと慌ただしい警察署内で、落ち着かないまま、仕事が続く。

 北新宿の雑居ビル内で東川幸生が転落死した事件も、新宿の裏手のホテルで角井卓夫が殺害されたヤマも、捜査は進展せず、行き詰まっていた。警察側としても二件を公開捜査に踏み切っているのだが、正直なところ、有力な手掛かりは見つからない。単にわずかな物証だけで探る。

 一日が終わり、翌日も通常通り捜査本部に詰めた。思う。このフロアも変わらないと。刑事課には強行犯係や暴力犯係など、複数の部署があるのだが、俺も吉倉も強盗や殺人などを扱う強行犯係にいる。

 最近、新宿も以前に比べて物騒さが増した。元々繁華街で外国人が多いから、治安が悪いのだが、警察も手を打つ。篠田のいる歌舞伎町交番など、一つの独立した繁華街を取り締まるため、儲けられている。

 その日も帳場に詰めた。単調で疲れてしまう。デスクのパソコンで警察官専用の捜査情報サイトなどを見ながら、電話やメールなどでの連絡等を待つ。

 石井謙一は歌舞伎町の悪組織の親玉だが、九竜興業とつるんでいる。暴力団はいろんなことをして回るので、性質が悪いのだ。思うだけで震え上がる。確かに社会にとって必要悪ではあるのだが……。

 新宿中央署にもマル暴はいる。極一般的な警察署なので、暴力団取締の警察官が在籍していて、常に動いていた。拳銃や警棒などを携帯し、街を回る。あの人間たちは常日頃から様々な訓練をしているのだ。柔道や剣道、射撃、逮捕術などはもちろん、他にもいろいろと。

 午前中の勤務時間が過ぎ、昼になって出前で取られた丼物を食べる。幾分気が抜けた。やはり食事時は気持ちが落ち着く。捜査本部は絶えず動き続けているのだが……。

 食事を取り終え、午後からもずっと詰めた。変化はない。ただ、一歩外に出れば、大都会の喧騒に巻き込まれる。思っていた。新宿って街もどうかなと。職場があるから来ているだけで、基本的に人口密集地帯は苦手なのである。もちろん、都内は郊外にでも出ない限り、同じ街並みが続くのだが……。

 今、殺人犯はどこを逃げ回っているのだろうか?気になる。警察も懸命に捜査を続けているので……。そう思うと、心身ともに引き締まる。緊張感が高まって。(以下次号)


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