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事件  作者: 竹仲法順
29/230

第29話

     29

 その日もずっとパソコンの画面を見ながら、捜査本部に詰め続けたが、帳場内外からの情報等は特になかった。空振りが多い。確かに福野富雄は行方を晦ましている。そして俺たち警察の捜査は片手落ちになっていた。だが、デカはずっと犯人を追う。暗黙裡の鉄則だった。

 午後五時になると、いつものように夜勤の刑事たちがフロア内に入ってきた。昼夜交代で、この街の治安を守る。歌舞伎町は近辺の殺人事件など気にも掛けないように、今夜も賑わっていた。新宿駅まで歩きながら、街の様子を見る。大都会は喧騒に溢れ返っていた。

 地下鉄に乗り込み、自宅マンションへ戻る。疲れていたのだが、事件捜査は続く。いつも何かに追われている。暇じゃない分、潤いのようなものは欲しい。そう思っている。

 自宅に帰り着くと、麗華がいた。合鍵を使い、室内に入っていて、食事の支度をしている。夕食のいい匂いがした。気持ちが和む。

「麗華、今夜仕事休みなのか?」

「ええ。ママが別の用事で店開けられないの」

「そう……」

 一言言って、スーツを脱ぎ、部屋着に着替えた。そしてゆっくりし始める。彼女が、

「食事しましょ」

 と言ってきたので頷き、同じ食卓を囲む。料理は有り合わせの食材で作ってあったが、気にしてない。恋人の手料理が食べられるだけで幸せだ。そう思い、食事を取った。

 混浴した後、同じベッドに潜り込む。一通り絡み合った後、互いの体に毛布を掛けて、寝物語した。夜が過ぎていく。ゆっくりと。秋の夜は無駄に長いのだが……。

 翌朝午前六時に目が覚めて、起き出すと、麗華がキッチンに立ち、朝食を作っていた。着替えを済ませ、洗面してから、スマホでネットニュースを一通り見る。そして彼女の作った朝食を食べた。麗華は今夜は仕事があるようで、午前九時前にはここを出ると言っている。俺の方も午前七時半過ぎには自宅を出た。

 地下鉄で新宿方面へと向かう。ラッシュがひどかった。人の波に押し流されるようにして、都心へ出る。署に着き、刑事課横の捜査本部へと入っていった。月岡や吉倉、それに他の捜査員が来ていて、今日も新たな一日が始まる。午前八時二十分には業務を開始した。時間に流されるようにして、パソコンに張り付く。事件の捜査情報は気長に待つしかない。そう思っていた。

 午前中ずっと詰める。特に何もなかった。だが、事件発生時から時間が経っていて、長期化しているから、何もかもが薄れていく。新宿区を中心に捜査員が絶えず動いていた。なるだけ迅速に犯人確保と行きたい。それが警察サイドの読みであり、秘めた思惑だ。

 正午になり、人数分の出前が届けられ、吉倉と一緒に食事を取った。食事後一息つき、コーヒーを飲みながら、気分を変える。頭の中はすっきりしていても、いろんなことに追われ、苦痛はあった。それにパソコンで例の警視庁のサイトを見ているが、更新されてない。事件に関する新たな情報はゼロだ。新宿区内の所轄の捜査員が連携し、捜査に当たっている。唯一、歌舞伎町交番の篠田巡査部長が屋内で勤務していたのだが……。

 午後の時間をやけに長く感じる日だった。鬱々としてしまって。(以下次号)


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