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事件  作者: 竹仲法順
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第27話

     27

 福野富雄が角井卓夫を殺害した際、ホテルの室内で争った形跡があったことや、その殺人が何かしら因縁めいているということを、ずっと考えていた。何かといろんな場所に首を突っ込む九竜興業が、構成員の福野に角井を殺させ、闇に葬らせたのは、害者が経営していたクラブへの嫌がらせと殺意が相半ばして入り混じっている。何とも性質の悪く、薄気味悪い事件だ。

 警察の捜査にブレーキが掛かっている。月岡の指揮の下、吉倉や他の捜査員と共に捜査本部に詰めているのだが、何かしら捜査は進展しない。もちろん、犯人側としても動機はあるはずだ。だが、今一はっきりしない。霧が掛かったように、視界が利かずにいる。

 ただ、どちらにしても北新宿の雑居ビル内で東川幸生を殺害した人間も、角井を新宿のホテル一室で殺害したと目される福野も、また尻尾を出すはずである。警察は警察でそれなりの捜査をする。恐れることはない。前進していけば、必ず解決へと行きつく。そう考えていた。

 その日も午後五時には同僚たちに一言言って帳場を出、歩き出す。秋だが、肌寒い。スーツ姿だと冷える。街を歩き、新宿駅から地下鉄に乗り込んだ。そして自宅マンションへ戻る。帰宅して一息ついた。昼間は激務だ。暇はない。特に殺人事件を案件として抱え込んでいると、夜間熟睡できても、日中はきつい。

 翌日も普通に午前六時に起きて、上下ともスーツで固め、コートを一枚羽織って出勤した。署に着き、刑事課を通り越して、捜査本部へと入っていく。デスクでパソコンを立ち上げて起動させてから、警視庁のサイトにアクセスした。捜査情報などが順次アップデートされているページで、警視庁職員しか見れない。このところずっと、ここを閲覧していた。

 昼になり、出前でラーメンが取られ、職員が交代で食事を取る。帳場内は刑事が数名いて、皆臨戦態勢だ。常にピリピリしている。さすがにストレスは体にも心にも来る。とにかく体調には十分気を付けていた。体が資本だからだ。

 食事後、コーヒーを淹れて飲んでいると、吉倉も食事を取った後のようだった。タバコを一本取り出し、銜え込んで火を点ける。煙が上がり、タバコがメラメラと燃え出す。俺の方はコーヒーを口にしながら、また例のサイトを見ていた。

 サイト自体、更新情報がない日の方が多い。さすがに捜査は進捗していなかった。頭の中であれこれ考えるほど、単純じゃない。それは十分分かっていた。とにかく外部からの連絡を待つつもりでいる。捜査情報など、案外いろんなところに転がっているのだから……。(以下次号)



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