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事件  作者: 竹仲法順
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第25話

     25

 パソコンに向かい、作業していると、午後五時になる。席を立ち、捜査本部にいる捜査員に一言「お疲れ様でした。お先します」と言って、カバンを抱え、帳場外へと歩き出す。疲れはあった。だが、夜間は帰宅したら自分の時間を取る。いろいろと抱えていることも多いのだし……。

 新宿駅から地下鉄に乗り込み、自宅マンションへと戻る。ちょうど午後五時から五時半頃というと、電車は夕方の一時的なラッシュで混む。座席に座れても、車内は人間が多い。持っていたスマホを見ていると、すぐに目的の駅に着き、降りてから部屋へと歩いていく。

 鍵を開けると、当然誰もいない。麗華が来てくれる時は、手料理に有り付けるのだが、彼女もクラブで働いていて、忙しい時が多い。俺だって食材があれば、炒め物や煮物などを作れる。麗華に依存しているわけじゃない。

 その夜、自炊して食事を取った後、シャワーを浴びた。疲れを落とす。昼間の憂さなど、家に帰れば落ち着く。また明日も通常通り勤務なのだが……。気が滅入る時は、軽くビールを飲む。思っていた。酒類だって、今は昔よりもはるかにいいものが出来ていると。さすがにヤケ酒はしない。あくまでビールは三百五十ミリリットル入りのレギュラー缶一本に留めておいた。

 午前零時には眠る。ベッドに入り、すぐに寝付いて朝まで熟睡した。快適な睡眠を取る。さすがに仕事がきついと、心身ともに辛い。だが、仕方ないのだ。刑事という仕事しか出来ないのだし……。

 そしてまた新たな一日が始まる。ベッドから起き出し、部屋着からスーツに着替えた。キッチンで一杯コーヒーを淹れ、飲んでから部屋を出る。髪は伸びてきたら刈り込むので、特に何も付けない。

 通常通り午前八時過ぎには署に着いた。刑事課を通り過ぎて帳場へ入ると、月岡も吉倉も、永岡の連れてきた警視庁の刑事三名もすでに詰めている。

「おはよう、井島」

「ああ、おはよう」

 吉倉が挨拶してきたので一言返事し、デスクに着く。パソコンを起動させ、常に見ている警視庁のサイトにアクセスした。昨日の時点で更新されていたページは、今日まだ更新されてない。

 このサイトは凶悪事件発生時、頻繁にアップデートされる。おそらく庁内にいる更新担当のデカも手が回らないのだろう。殺人事件の捜査状況は所轄から逐一報告があり、それで本庁側も動いている。情報不足の面もあると思われた。これだけ警察内外で騒ぎがあっていても。マスコミもすでに嗅ぎ付け、当然報道もなされている。ここは難しかった。どう舵を切るかが、だ。それにいくら捜査本部といっても、寄せられる情報など限られているのだし……。

 月岡も吉倉もおそらく同じサイトを見ているだろう。そしてその日の昼過ぎ、サイトがアップデートされた。<角井卓夫殺しのマル被福野富雄に対し、新宿区内にて目撃情報あり>と。それで俺と吉倉は、拳銃保管庫から取り出した銃を携帯し、帳場を出て出動した。おそらく九竜興業の人間たちもいるだろう。組対の動きはまだ伝えられてない。だが、暴力団員を野放しにするわけにはいかない。

 その日の午後一時を回る頃、俺たちは街を駆け足で移動したのだが、福野のみならず、九竜興業の関係者とも接触することなく取り逃がした。署に戻り、拳銃を保管庫に戻してデスクに着く。月岡が、

「済まない。無駄足だったみたいで」

 と言った。俺たちもそのまま勤務を続ける。どうやらこのヤマは根が深いのだし、厄介な代物だ。思ってる以上に。(以下次号)


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