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事件  作者: 竹仲法順
228/230

第228話

     228

 その日の昼過ぎに、殉職した吉倉の葬儀が無事終わり、新宿中央署に刑事たちが戻ってきた。皆、疲れているようだ。岩尾ら旧幹部の総退陣後、急ピッチで新体制を作った警察上層部の人間たちも、葬儀中は神妙な顔をしていた。確かにもう吉倉は戻らない。葬儀は通夜も兼ねていて、皆、黒服で臨んでいた。

 そして俺たち課員は揃って遅い昼食を取り、その後、各々のデスクで業務を行う。吉倉のデスクには遺影が飾ってあった。少しだけ笑みを浮かべた写真が額縁に入っている。もう死者は帰ってこない。残酷だが、紛れもない事実である。

 一方、警視庁では殉職警官を丁重に弔った後、すぐに被疑者の取り調べが行われた。殺人容疑で逮捕された福野富雄と村上義彦は、取調官にいろいろと訊かれ、答えを返す。福野は角井卓夫を、村上は東川幸生を殺害した旨をそれぞれ大筋で認めた。

 取調べは当然可視化されていて、本庁所属の警察官は誰でも様子を窺うことが出来た。今回の殺人事件で九竜興業構成員と元警視庁捜査一課の刑事が組み、二人の人間を闇に葬ったのは紛れもない事実だ。

 そしてもう一人のキーマンがいる。歌舞伎町を裏で動かす石井謙一だ。警察関係者は速やかに石井を確保する作戦を立てる。殺人犯が捕まった以上、黒幕も当然身柄を確保されておかしくない。考えてみれば、新宿に於いて九竜興業を駆り立てたのは石井本人である。不自然さは全くない。闇の大ボスもいずれは警察のご厄介になるのだ。逮捕は時間の問題である。

 今後、事件の詳細を警察が掴めば、追ってマスコミも嗅ぎ付けてくるだろう。記者発表の日程は決まってないのだが、いずれ情報は明かされる。別にそこに俺たち所轄の警官の思惑が絡むことはない。メディア関係者は今回の事件に関し、いくらでも情報が欲しいのだ。ヤツらは明け透けである。性質が悪いという点では下手すると、犯罪者を上回ってしまう。何もかもを遠慮なしに垂れ流すのだから……。(以下次号)


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