第226話
226
警視庁立件から一転、検察との和解で、警察の今後の事件捜査は上手く行きそうだった。そして和解成立の翌日、新宿中央署刑事課で署長の綾瀬が、
「昨日の歴史的な和解で、一応事件捜査の環境が整う。皆気合を入れて、東川幸生・角井卓夫殺害事件のヤマを追ってくれ」
と言ってきた。俺たち捜査員は皆、一様に頷く。そして吉倉と共に署を出、街へと向かった。これから福野富雄と、警視庁の元刑事である村上義彦を殺人容疑で追う。きつい仕事となりそうだった。何せ、刑事事件は捜査が大変だ。特に殺しとなると、一際厄介である。
おそらく街には組対の捜査員が潜伏しているだろう。あの連中もずっと対象を張っている。別に俺たち所轄のデカが何も言わなくとも、嗅ぎ付けているはずだ。九竜興業事務所近辺などは、私服の捜査員が大勢いると思う。
暑さで参っていた。スーツの下のワイシャツにも、その下のアンダーシャツにも汗がじっとりと付き、滲んでいる。いつも外に出れば、こんな感じだ。時折、通りのビルの木陰に入り、少しだけ涼む。吉倉が缶入りのアイスコーヒーを買ってきてくれた。プルトップを捻り開けて飲みながら、水分補給する。アスファルトは焼けるように暑い。
その日は特に被疑者との接触がなかった。ただ、新宿区中の所轄の刑事課に在籍する捜査員が、本庁の一課のデカや組対関係者と同じ場所にいることは偶然じゃない。警察は九竜興業相手に反撃に出る。いつの間にか、裏金問題も自ずと過去のことのように、立ち消えになり……。(以下次号)




