第223話
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日曜も午後五時には仕事を終えて、刑事課を出、新宿の街を歩き出す。疲れはあったのだが、駅まで歩いていった。歌舞伎町は明々とネオンが灯る。あの街は夜活動するのだ。欲望の巣であり、悪の巣窟として。
翌日月曜も通常通り出勤した。特に変わったことはない。吉倉や梨香子と同じ刑事課に詰めながら、仕事する。まあ、いつも暇なしでずっと業務だ。ストレスも溜まるのだが、俺自身、冷水シャワーで汗を洗い流し、アイスコーヒーを淹れて飲むこともあった。蒸し暑い夜は冷たい飲み物がいい。ビールは余計な脂肪分が付くから、NGなのだが……。
火曜も朝起きて支度をしてから、部屋を出る。暑さでだるい。空は曇っていたが、まっすぐに都心へと向かう。まあ、通常通り業務があるのだから、署の刑事課へと行った。連日課内はエアコンが利き過ぎている。冷房はどうしても体にダメージを与えてしまう。もちろん、課内にいる時は上着を脱ぎ、長袖のワイシャツ一枚だったが……。
いつも思う。新宿の街も事情がたくさんあると。確かに歌舞伎町は放火による火災から見事なまでに復興し、警察も繁華街には目を光らせているが、九竜興業は街のあちこちに拠点を持っている。暴力団がよく使う手だ。普通の会社に見せかけて、裏では散々悪事を働く。銃やドラッグの横流し、それにAV女優や風俗嬢のあっせんなど、全部ヤツらのやることである。警察も全部は摘発できない。根が深いからだ。
だが、それでも警察は死力を尽くす。あの連中を野放しにすると、また放火や殺人などをやりかねない。それに俺も身辺には十分気を付けていた。この街でも過去に数名の警察官が九竜興業関係者と目される人間に刺されたり、集団で暴行を受けたりして、命を落としている。亡くなった刑事たちは皆、殉職扱いだ。だが、死んでの名誉が一体何になるのか?ついそう思ってしまう。
時間が流れる。俺も昼間は警察署で仕事をした。特に変わったこともなく。日々いろいろ考える。暑気で多少の苦痛はあるのだが……。(以下次号)




