第211話
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その日の午後も仕事をし、五時になってから、刑事課を出た。そして街を歩く。疲労を感じていた。新宿駅近辺には大勢の人がいる。この辺りは大抵各業界の人間などが多数いて危ない。AVのスカウトマンや風俗業界の関係者など、若い女性が何かと関わりたくない人間たちがたくさん跋扈していて、警察もその手の輩の取り締まりはしている。
九竜興業もそういった類の闇の仕事は多数請け負っている。ヤツらは暴力団だから、いろんな人間や団体などに対し、絶えず圧力などを掛けて回るのだ。どこまで性根が腐っているのか知らないが、嫌な連中である。
駅から地下鉄に乗り込み、自宅へ戻る。電車に揺られながら、スマホを見ていた。いろんなニュースやサイトなどを閲覧し、目的の駅で降りてマンションへ向かう。
帰り着き、スーツを脱いで部屋着に着替えた。キッチンで自炊し、夕食を食べ終わってから入浴する。風呂上りにミネラルウオーターを軽く口にし、ベッドに潜り込んだ。毎日バリバリ仕事をしているから、夜は眠る時間だ。
一晩休み、また翌日も朝起きてスーツに着替える。コーヒーは気付けだったが、薄くして飲んだ。あまり濃いのを飲むと、胃腸をやられるのだし……。
通常通り出勤する。駅に出て、朝の新宿を歩いた。大都会はクールだ。誰も他人の相手をしない。それに慣れきっていた。
午前八時二十分には刑事課に着き、デスクでパソコンを立ち上げてキーを叩く。眠気はない。淡々とした事務作業も、慣れるとそうでもないのだ。
昼になると、自ずと空腹を覚える。まあ、朝食べないので、胃の中が空っぽで当たり前なのだが……。食事しながら、心身ともに休める。朝と違い、急激に眠気が来る。デスクの椅子に座り、しばらくじっとしていた。
午後からも仕事が続く。悪党どもが街で暴れ回る最悪の事態だけは回避できているものの、いつ何が起こるか分からない。不安はあった。もちろん、警官にとって、その手の不安は付き物なのだが……。(以下次号)




