第209話
209
午後五時には一日の仕事を終えて、刑事課を出た。疲れが溜まり、ヘトヘトだったが、街を歩く。九竜興業の連中は性質が悪い。警察が監視を怠ったと思ったら、またどこかで暴れ出す。仕方ない。暴力団というのは、所詮そんなろくでもないヤツらなのだ。あちこちで悪いことをして回る輩の集まりである。そう思い、割り切って日々淡々と警察官としての職務をこなす。
慣れてしまった。きつい仕事にも。日中はずっと庶務や雑用などで手一杯だ。食事時ぐらいしか休む間がない。その分、仕事が終わり、自宅に帰り着けばゆっくりする。休息は大事だ。それは十分分かっている。
その日も帰宅して食事を取り、シャワーを浴びた。風呂上りに冷たいミネラルウオーターを呷り、ゆっくりし始める。極度に疲労が溜まっていた。だが、明日も通常通り仕事があり、朝は出勤だ。暇はない。また一日署に詰めることになる。暑さで体がだるい。明日は一日曇りのようだが……。
一晩眠り、一夜明けて朝起き出す。キッチンでコーヒーを一杯淹れて飲んだ。スーツに着替え、洗面してからカバンを持ち、部屋を出る。疲れが癒えないまま、出勤した。もちろん、一定の緊張状態にあるから、何とか持つ。
新宿に出て、駅から署へと歩く。午前八時二十分には刑事課に入り、デスクでパソコンを立ち上げた。キーを叩く。一日の仕事が始まった。何かと疲れるのだが……。
業務を行いながらも、いろいろ考える。特に昼になって食事を取る際も、栄養補給しながら、一定の考え事はするのだ。常に呼吸している以上、脳には何かが思い浮かぶ。俺も例外なしにそうで、ずっと頭は使っている。食事を取り終えた吉倉が、フロア隅でタバコを吸っていた。稀にこちらを振り向く。いろいろ抱え込んでいるのだろう。相方である俺にも明かさずに。もちろん、それが何かということもない。単に仕事上組んでいる人間というだけで……。(以下次号)




