第208話
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その日も仕事を終えてから、午後五時にはパソコンを閉じ、刑事課を出る。街を歩きながら、いろんな人間たちとすれ違う。互いに気にも留めない。夕方だが、まだ幾分気温が高かった。彼方に沈みかかった太陽は照らす。街や人を。
新宿駅から地下鉄に乗り込み、自宅へと向かう。疲れていたのだし、今夜もゆっくりするつもりでいた。思う。独り暮らしで、稀に麗華が来るという生活の気楽さを。
自宅に帰り着き、スーツから部屋着に着替えて、キッチンで食事を作った。食べ終わってから、後片付けをして、シャワーを浴び、そのまま寝床に入る。急には眠れないのだが、しばらく目を瞑っていた。いつの間にか眠っていて、午前三時前に一度目が覚め、それからまた眠り、最終的に午前六時には起きる。
キッチンでコーヒーを一杯淹れて飲み、スーツに着替えて出勤準備をした。疲れは溜まっている。だが、通常通り仕事だ。カバンを持ち、部屋を出てから、歩き出す。
地下鉄で新宿へと出、署に行った。午前八時二十分には刑事課に着き、デスクに座ってパソコンに向かう。キーを叩き、庶務をこなしていった。デスクワークが続き、肩や腰などが痛む。一種の職業病だ。割り切っていた。
昼になって、食事に弁当が配られる。出前は高く付くので、経費削減にコンビニ弁当などが取られているようだ。不満はない。所轄の刑事は基本的に安上がりである。弁当で十分だった。
午後からもまた仕事だ。何かと疲れていた。過労とストレス、それにこの高い気温が心身を苛む。自然だと思っていた。誰でも疲労は抱えるだろう。口に出して言わないだけで……。
午後の大都会はざわついていた。絶えず人が行き交う。犯罪が常に巻き起こる。新宿という、一際騒々しいこの街では。(以下次号)




