表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
事件  作者: 竹仲法順
13/230

第13話

     13

 吉倉が監察医の解剖所見を読んでいる横で、俺の方も業務に専念していた。今日にはこの所轄にも帳場が立つだろう。角井の遺体は殺人という事件性があるので、警察が捜査を続ける。監察医や科捜研はここから先は入ってこない。

「井島」

「何?」

「帳場の指揮は誰が執るんだろうな?」

「それは月岡課長なんじゃないの?」

「現場は俺が管理してるからか?」

「ああ。……大変だろうけど、しっかりね」

 そうとしか言えなかった。この男は頑張るのだ。俺や他の刑事が何を言っても必死になる。案外、責任感の強い男性だった。だから、現場は丸投げされたのだろう。その代わり、捜査本部は月岡に任せて、だ。

 午前十一時過ぎに吉倉がデスクの椅子から立ち上がり、歩き出す。おそらく現場に行くのだろう。刑事は普通二人一組なのだが、例外的なこともある。特に今回のように事件発生後、現場近辺を動く際、単独行動することも稀にあった。

 午後二時過ぎにスマホに連絡が入る。誰からだろうと思って画面を見ると、帳場にいる月岡からだった。通話ボタンを押して、耳に押しあて二言三言ほど会話して頷く。そしてすぐに刑事課に隣接する捜査本部へと向かった。

「課長」

「ああ、電話で呼び出して済まない。俺も害者の解剖所見読んだ。……手口は頸部圧迫による絞殺だが、ホテル一室に遺棄された際、ホシは部屋の扉からまっすぐに逃げてる。ドアノブに付いてた指紋・掌紋などを布のようなもので拭った後、室外に出たことが鑑識の調べで判明してるが、これを君はどう読む?」

「その通りですよ。ホシは死体を遺棄した後、室内にある科学的証拠等を消してしまってから、逃走してます」

「ホテルのボーイが目撃してるんだ。事件直後のマル被を」

「それは確かなことで?」

「ああ。……ホテルの防犯カメラには、途切れ途切れにしか映ってなかったけどね」

 月岡がそう言い、軽く息をつく。そして言った。

「現場の捜査は吉倉に任せて、君は事件当日のホテル内の様子を探ってくれ」

「分かりました」

 頷き、一礼してから歩き出す。月岡はパソコンのキーを叩き、各捜査員にいろんな命令を出していた。帳場の責任者として当然のことだろう。まあ、上司の行動など一々知らないのだが……。それに思っていた。この捜査本部がどれだけまともな捜査を出来るのかと。強盗や殺人など、凶悪犯罪の捜査で立った帳場は形式的な代物もあるのだし……。最後は現場の警官が解決するのだ。

 北新宿の東川殺害との関連性を調べながら、思っていた。二つの事件は繋がっている可能性が極めて高いと。雑居ビル内で殺されたIT企業社長と、そのビル内でクラブを営業していた人間の殺害――、共通点がないわけじゃない。もちろん、単なる所轄の一刑事の勘の類ではあったのだが……。(以下次号)








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ