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事件  作者: 竹仲法順
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第121話

     121

 仕事をこなしながらも、合間に席を立ち、コーヒーを淹れ直す。確かにきつい。胃が痛くなることもある。ストレスや過労が祟っているのだろう。健康管理が大事だった。体を壊したら、元も子もない。気を付けるつもりでいた。

 そしてその日も午後五時には仕事が終わり、刑事課を出て、署を後にする。新宿の街を歩きながら、夜の繁華街の空気を吸った。人の熱と、香水やニコチン臭、それに都市特有の排気ガスの臭気が混じり合って、辺りに漂う。まあ、鼻腔に入ると、あまりいい代物ではないのだが……。

 地下鉄に乗って自宅に帰り着き、ゆっくりし始める。食事を作って取った後、熱めのシャワーを浴びた。冷えはするのだが、もう春の足音も近付いているような気もする。一日のうちで温かい時間帯もあった。特に昼間など、小春の日のような時もある。

 一夜が明け、朝になると、ベッドから起き出す。上下ともスーツに着替えてカバンを持ち、部屋を出た。今日も通常通り仕事がある。刑事も暇なしだ。非番の日もろくになく、勤務していた。

 午前八時二十分より少し前に刑事課に入っていき、パソコンの電源ボタンを押して立ち上げる。吉倉がいて、

「井島、おはよう」

 と言ってきた。

「ああ、おはよう」

 一言そう返し、コーヒーを一杯淹れて砂糖を注ぎ入れた。苦味を誤魔化すのだ。もちろん、ブラックのコーヒーは飲み慣れている。普段ずっとミルクと砂糖なしだからだ。胃痛にはブラックのコーヒーはまずいと思い、あえて糖分を入れる。軽く一口飲んで味を確かめた後、デスクに着き、キーを叩き始めた。

 考えてみれば、俺自身、家族運が悪かったのだ。オヤジは飲んだくれで、母親も俺のことをあまり理解してなかったように思う。まあ、過去のことを考えても仕方ない。それにこれからの人生の方が圧倒して長い。そう考えると、今までの人生で味わった不運はいずれ解消できる。

 淡々と仕事をこなす。課内は女性警官もいて、黒服に身を包んだ女刑事もいる。土曜で窓口業務は休みなのだが、仕事はたくさん溜まっているらしく、警官は絶えず業務に追われた。

 昼になると、取られた出前で昼食を済ませる。特に変わったことはない。食事はラーメンやチャーハン、それに丼物など単品で、十分味わいがある。さすがに空腹時はエネルギーが足りない。そう思い、しっかりと栄養を取る。

 午後からも仕事が続いた。いろいろと考えることはあるのだ。業務の合間にでも。(以下次号)


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