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事件  作者: 竹仲法順
12/230

第12話

     12

 新宿区内でも裏通りにあるホテルの一室で、男性の絞殺死体が発見されたのは、翌日の昼過ぎだった。現場の管轄は新宿中央署である。俺も吉倉も月岡の出動命令を受け、臨場した。秋の日差し穏やかな日に忌々しい殺しとは――、そう思い、訝る。

 死体で見つかったのは、東川が殺された北新宿の雑居ビルの一角にあるクラブ<スリープレス>のオーナー、角井(かどい)卓夫(たくお)だった。ホテル内は一際ピリピリしている。警察官が捜索に来たからだ。

「遺体の様子から見て、死後八時間ぐらい経過してますね」

「ってことは、死亡推定時刻は今日の午前四時から五時の間ってとこか?」

「ええ。間違いありません」

 署鑑識課の男性課員が吉倉にそう言い、後は角井の遺体を運び出してもらった。秋で気温は下がっているのに、若干腐乱している。思う。絞殺だとホシは部屋に出入りして害者を殺害したか、別の場所で絞め殺し、部屋に遺棄したかどちらかだ。いずれにしろ、厄介だ。一つ一つ潰していくしかない。

 それにしても、角井が東川の殺害された雑居ビル内のクラブのオーナーというのは偶然じゃない。話が出来過ぎている。やはり、東川と角井には何らかの接点があるはずだ。それは感じていた。

 吉倉が黄色い現場保存用ロープをくぐり、現場を出てから、嵌めていた手袋を取る。そしてタバコを取り出し、銜え込んだ後、火を点けて吸い始めた。同じ署にいる別のデカたちも臨場していたが、止めることはない。吉倉はほんの十分ほど喫煙し、吸殻を処分して息をつく。

「井島、きついヤマになるかもしれないぞ」

「ああ、分かってる。……北新宿の事件とも関連がないとは言えないし」

「まあ、そうだな。……どっちにしても、うちの所轄に帳場が立つのは間違いない」

「うん。しばらくは辛抱だね」

 そう言い、重たい息を吐き出す。そしていったん署に戻るため、ホテルを出、歩いていった。秋空が広がっているが、疲れはある。何かあれば即、持っているスマホに連絡があるはずだ。臨場した後、立ちっぱなしだったので足が痛い。後でエアーサロンパスを振ろうと思った。

 吉倉は現場に居残っている。大変だろう。階級は巡査部長だが、現場の指揮は任せてあり、実質管理する立場だ。まあ、警察は高度な階級社会なのだが、上の立場の人間が必ずしも現場で指揮を執るわけではない。適宜やるのだった。これは今も昔も変わらない。

 害者の遺体が搬送先の警察病院で司法解剖されたのは、その日の午後四時半を回る頃だった。そして解剖所見等がメールに添付され、新宿中央署の吉倉のパソコンに送られてきたのは夜勤の刑事がフロアにいる午後八時前だ。吉倉が解剖記録を見たのは翌日の午前八時半前で、<事件性あり>との診断がなされている。また一悶着あるな。所見を読んだ吉倉はそう思っていた。(以下次号)


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