第101話
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一日の仕事が終わると、一息つき、月岡や吉倉に一言言って刑事課を出る。そして署外へと歩き出した。心身ともに疲れている。だが、新宿の街を歩きながら、焼失した歌舞伎町を見て、複雑な心境だった。篠崎や樋口などの放火犯は、裁判を待たずに死刑にしてやってもいいのにな、と思っていた。凶悪犯罪は絶えない。この日本という高度な法治国家でも。
新宿駅から地下鉄に乗り込み、自宅へと戻る。電車内でスマホを使い、ネットニュースを読んだ。いずれ警視庁の刑事たちが逃亡中の福野富雄や村上など、殺人という重犯罪を犯した人間たちを逮捕するだろう。焦ることはない。事件は必ず解決する。
そして一夜明け、翌朝も通常通り出勤した。朝のだるさはあったが、キッチンでコーヒーを一杯淹れて飲み、目を覚ます。上下ともスーツを着て、必要なものを詰め込んだカバンを持ち、歩き出した。
朝のラッシュに巻き込まれながらも、署へと着く。デスクに座り、パソコンを立ち上げて仕事を始めた。吉倉も隣のデスクにいてタバコを吸いながら、キーを叩く。仕事には能のない人間だが、一応相方だ。互いに仕事上のパートナーとして意識し合っている。
刑事課は絶えず電話が鳴り、捜査員は皆持ち場で仕事をしていて、活気があった。暇はない。時折コーヒーを淹れて飲みながら、パソコンに向かう。寒さに参ってしまう。冬眠という言葉通り、本来なら冬場の勤務はなしにしてもらいたい。もちろん、そうはいかないのだが……。
昼食に出前のうどんを啜る。疲労していても、食欲はあった。食べ終わると、ほんの短時間の休憩を挟んで、また午後も仕事が続く。署内では一人一台マシーンを持ち合わせていた。単調な勤務も大変だ。まあ、改めて考えるに、普段からそういった負の側面は意識してないのだが……。
時間中は一定の緊張感を持ち、詰める。一月も半分が過ぎようとしていた。つい先日、正月を迎えたかと思ったら、もう二週間経つのだ。時が流れるのは早い。痛感していた。
火災のあった歌舞伎町はまた復興するらしい。あくまで小耳に挟んだことなのだが……。(以下次号)




