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これって運命?

思わず私が叫んだ言葉はこれだった。


「おすわり!! 」


すると私を舐めまわしていた狼、いや、もう犬で良いや。

犬はまるで知っていたかのように「おすわり」を見事に再現した。

妙に姿勢がいい。

えっへん、とでも言うように顎を逸らしてチラチラと私を見ている。

犬である。


そう、私はどうやらこの犬に懐かれていたらしい。

喰われると思ったあの時も、私に戯れつこうとしていたのかも知れない。

だからあんなに目をキラキラとさせていたのだろう。

どうりで尻尾を踏まれたにしては嬉しそうだと思った。

「う、動いちゃダメだからね・・・」

そう犬を手で制して、私は未だにぶら下がっている少年を見上げた。

少年は信じられない、とでも言うように逆さまのまま目を見開いて私を見ている。

そして私もそんな少年を目を見開いて見つめていた。


だって、少年の目だけじゃなく髪の毛も真っ赤だ。


逆さまになったおかげで深く被っていたフードが外れ顕になった少年の目と髪は真っ赤だった。

実は赤い色をした人間は1度も見たことが無い。

赤色なんて有りそうな色だが何故か私の周りには居ないのだ。

そしてやっぱり超美少年だった。


まるで血が流れているような赤に私の目は奪われていた。

心無しか少年の顔もあかくなっているような・・・いや、赤い。

私は気がついた。

少年の頭部に、血が、上っている。

「わあああああっ今! 今下ろすから!」


それからもの凄く苦労して少年を下ろしたのは別のお話ということで・・・







そして私と少年はまた木の上に二人で座って居る。

「ねえ、僕言ったよね?」

「はい、言いました」

「ねえ、だったらどうしてあんなことしてるの? 解らないの? 」

「いえ、そんなことは・・・」

「じゃあどうして」

少年を下ろしてから木に上って、それからひたすら説教を受ける私。

よ! 自業自得。

少年は優しげな目を今は厳しく細めて私を見つめている。

怒っても美少年だな、なんて場違いなことを考えながら私も少年を見つめる。

「聞いてる?」

「だって、」

「だってじゃないでしょ?危ないでしょ?」

「うう」

全然言い訳を聞いてくれないじいやみたいだと思った。

生まれ変わってから説教という説教をじいや以外から受けたことは無い。

怒るということは、私のことを心配したり想ってのことだということをちゃんと解っているつもりだ。

でも、でも

「・・・って、・・・たかったんだもん」

「え?」

「だって会いたかったんだもん!君に!」

「────へ」

言えた!

だって私は罠を張っている間中そのことばかり考えてきたのだ。

やっと述べることが出来た自分の気持ちにどんどんと感情が溢れてくる。

「どうしても! でもどうしたら会えるかなんて解んないじゃない!! もう1回同じ場所に行くくらいしか私には出来ないじゃない! !君はどこに住んでるのかも教えてくれなかったじゃない逃げるみたいに居なくなったじゃない!! 」

半ば泣きそうになりながらの見事な逆ギレである。

少年も呆れているようだ。

「・・・だからって、罠はないよ・・・」

うん、その通り。

そして興奮した私の背中を優しくなでてくれる。

どうどう・・・って馬じゃないんですけど。

「そんなに、僕と会いたかったの?」

少年は横から覗き込んで私に尋ねる。

私はこくりと頷きながらも少年の顔の近さに内心ビビっていた。

「どうして?」

「・・・なんか、会ったことあるような気がして・・・」

何だか安っぽいナンパのようなセリフだが本当のことなのだから仕方が無い。

だからどうしても会いたかった・・・

だけど少年は笑ったりせずに黙って私のことを見つめている。

その顔は心無しか真剣だった。

「僕も」

「え? 」

僕もって、僕もって言ったの?

それは会ったことがあるような気がするって言葉に掛かってるの?

これは、運命を感じざる終えない。

でもどうしてなのだろうか。

やっぱり前世からの繋がりなのだろうか。

そんなことって、あるのだろうか。

姿形が変わり記憶もおぼろげな私には解るはずもないが。

何となくしばらく見つめ合っていると、少年の口が開いた。

「僕の名前は、セト」

そう言って片手を差し出してくる。

思わず少年の顔と差し出された手を交互に見て、自己紹介をされたのだとやっと気づいた。

私はその手を両手でしっかりと握る。

「私はヴェルリネ!宜しくしてくれるの!? 」

「あははっ何その言い方」

セトはそう言って花が綻ぶように笑う。

美少年の笑顔の破壊力と言ったら無いぜ、もう。

私ショタでも良いかも。

セトもさっきまで怒っていたのにどうやらもう大丈夫みたいだ。

「けど、危ないことしたら怒るよ」

うん、大丈夫じゃなかった。


その時、ワンッと聞こえた鳴き声に思い出す。

下を見下ろすと、自分を忘れるなと言うような顔をして白い狼がこちらを見上げていた。

いくら大きくても流石に上には登って来られないらしい。

幹の周りをぐるぐる回っている。

そうだった、こいつどうしよう・・・

「狼が、人に懐くことは無いはずなんだけどな・・・」

セトが不思議で堪らないという顔をして呟く。

私は微妙な気持ちで狼を見た。

狼のその目は私しか見えてません! とでも言うのだろうか。

本当に私のことが大好きらしい。

つねづね思っていたが、私ってチート過ぎじゃない?

美少女でしかも神の生まれ変わりとか言われて、動物にも好かれちゃう・・・だなんて。

環境が良すぎて怖いんだけど。

「・・・あの子、家まで着いてきたらどうしよう」

「・・・だね」

「って、もうそろそろ戻らなくちゃ!」

私はお祈りの時間がもうすぐ終わりを告げようとしているのを思い出した。

セトが何でもないような顔をして言う。

「送るよ」

そして私はハッとした。

送るってまたあのビューって感じで風と共に瞬間移動?

どうやって!?

「あああああ聞きたいでも時間が無いい!! 」

「!? 」

思わず頭を抱えた私を見て驚くセト。

そうそうそう!

それを聞くためにも会いたかったのに!

驚く彼にお構いなしに私はセトの肩をガッシリと掴む。

「本当に! わたしと! また会ってくれるんだよね!? 」

セトは驚きの表情をすぐに笑顔へと変える。

嬉しくて仕方が無いと言う顔に私は見とれてしまった。

そしてその瞬間、覚えのある突風が起き、私は目をギュッと瞑った。

「・・・っ」

ぐらりと身体が傾いたと思ったら周囲の気配が急に変わったのを感じ、私は目をゆっくりと開く。


「まただ」


目を開くとそこは神殿の前。

セトはもちろん、狼も居なかった。





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