シリアスって何おいしいの? 1
『赤』
それは呪いの色、災いの色、罪の色。
人の中に流れる色が赤いのは、人が生まれながらに穢れているから。
罪を背負っているから。
罪を償い、穢れを浄化することこそが人に与えられた使命である。
赤に染まりし者、罪深き穢れを隠し切れぬ者、それは即ち魔王エスリードの化身である。
この世に災いをもたらすであろう。
この世界ではそんな迷信がまことしやかに囁かれている。
ちなみに私は直接誰かの口から聞いたことはない。
私の耳にはどんな穢れも入れたくないんだってさ。
すべて前世からの知識である。
ソルドとの衝撃的な再会…というのも何だが…の後、神殿に向かって歩いて来る迎えの人間を発見した私は、新たな記憶に戸惑っている間もなく速攻で着替えを済ませ村へ帰ることとなった。
特技に早着替えを追加しようと思う。
セトが死んでしまうことを思い出した私は、さらに魔法への関心を高めていた。
当然、村中の本棚という本棚を漁ったが魔法の知識が書かれた本は一冊も無かった。
魔法というものはよほど特殊らしい。
なのでやはり私はセトに教えを乞うしか無いのだ。
なのだが、どうやらセトは私が魔法を覚えようとしていることをよく思っていない。
「何を企んでるの・・・?」
私が魔法について訪ねた瞬間にセトは言った。
あれ?おかしいなあ・・・
セトの前で可愛い女の子な部分以外を出したつもりは無いんだけど。
今一緒に木には登ったけど。
二人仲良く並んで足ブラブラーってね。
「・・・なんにも?」
「返事までに間があった、・・・嘘ついてるね」
しまった!!
あまりにも一瞬で返事が帰ってきたから戸惑ってしまった。
「そん」
「ダメだよ。絶対に教えない」
「えええええええ!!」
セトはそう言ってツーンとそっぽを向いてしまっている。
可愛い。
じゃなくて、これでは私の大脱走計画が狂ってしまう。
まだ17歳までに5年はあるが、セトの運命を変えるためにゲームのあらすじからズレまくるに越したことは無いのだ。
私が魔法を覚えることは早ければ早い方が良い。
ゲームでは私はちゃんと魔法を使えていた。
いつかわからないけど、使えるようになる話があったはず。
それは12歳なんて若い年齢じゃなくて、もっと後だった。
きっとそれでは遅いのだ。
セトを助けられない。
でも、私がもっと早く魔法を覚えて熟練度を上げて、それでもって脱走に挑んだらきっと成功率も上がる。
セトの身に何か起こるのであれば助けられるかも知れない。
そう思ったのに。
「お願い・・・」
そう声を出した途端セトが弾かれたようにこちらに振り向いた。
よほど悲愴な声をしていたのだろう。
そして私の顔を見て更にギョッと目を剥く。
「ベ、ヴェルリネ・・・っ何もそんな顔しなくても・・・」
「・・・」
多分私は泣きそうな顔をしていると思う。
よし、こうなったら泣き落としをしよう。
本当に泣きそうだし、間違って無いよね!
私がよよよーっと両手で顔を覆うために上げた手を
パシ、とセトとは違う方向に居る誰かが掴んだ。
「おい、お前今嘘泣きしようとしてるだろ」
いつの間にか隣に来ていたソルドだった。