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5,復讐の獣

ちょっとずつキャラ達の設定が明らかにー。

話は大して進んでません←

「トーマー?私の試合見てたー?」

「見る訳ねえだろ。つまらねえどころか相手が可哀想になってくるんだよお前の試合」

ルリの試合時間は七秒。

恐らく相手の生徒は何をされたかもわからずに意識を失っただろう。

ルリの魔力特性は『複写』

対象と全く同じモノを複製する事に適性のある魔力特性だ。

ルリは試合開始後、足元に展開した加速術式を、術式の位置情報を含めて多重に『複写』する事で、『同一座標に複数の同一術式』を展開して瞬間的な超加速を行った。

そして相手のそばを通過しながら峰打ちで意識を刈り取る。

それ故、大抵の生徒は抵抗すら許されずに一瞬で試合が終わるのだ。

知っていても対応が厳しい速度での攻撃なので、完璧に受け切れるのは上位の生徒数人かトウマぐらい。

試合の結果など見なくてもわかる。

「トーマ次の試合は?」

「あー、しばらく暇だな。この後もテキトーに観戦して時間潰す」

「では私もお邪魔してもよろしいですか?」

答えたトウマの隣に幼い、しかし落ち着いた声と共に声を裏切らない容姿の人物が立っていた。

「ああ、大丈夫だ」

その人物を見てシルとルリが驚く。

「…………トウマ様、私の記憶が間違っていなければこちらの方は」

「ん?ティリアだが?」

「久し振りですねルリさん。あなたは初めましてですね。ティリア・クレバーと言います。以後お見知りおきを」

トウマはいつも通り、ティリアは淡々と自己紹介を終えて席に着いた。

「トーマってティリアと知り合いだったの?」

「ええ、入学してすぐの時に道に迷った挙げ句に落し物をしてしまった時に助けて頂いたんです。大事なものだったので感謝感激雨あられというやつですね」

「いや大した事はしてないんだがな……拾ったのも偶然だし」

実際、トウマがそれを見つけたのは偶然だった。

トウマがごく日常的に展開している探索用の魔力の網、それにたまたま引っかかっただけだ。

その後にティリアに会ったのも、彼女が学園の中を何往復もしながら何かを探しているのを見たからだ。

ついでにティリアは道に迷っていたのだが。

「トウマ様ってもしかしなくても、こう、すごい人なんですか?知り合いの顔ぶれが話と違うんですけど」

「偶然だ。ほかのマスターよりちょっと魔力量が異常なだけで特別な地位だの階級だのじゃねえよ。魔術師としてはそれなりでもマスターとしての技量も単純な戦闘力もルリとかティリアにゃ遠く及ばねえしな。この学園じゃ文字通り無能だ」

「ですがトウマ様のように魔力を魔力らしく、と言いますか?使える方は早々居ないかと思いますが」

「あー、俺の戦闘スタイルは親父と姉貴に叩き込まれたモノだからなぁ。どっちかっつーと俺の姉貴と、あと妹の方が圧倒的に強かったし。俺程度じゃ秒殺されるね」

「トーマが秒殺ってなに?」

「トウマさんお姉さんと妹さん居たんですね。初めて知りました」

「あぁ…………まさしく”居た”んだよ」

自嘲気味に笑って言ったトウマにルリ以外の二人の表情が落ちる。

「あー、トーマ?言っていいの?」

「問題ねえよ。ただの過去だ」

「…………そっか」

少し寂しそうにルリが笑う。

「そうだねー……二人ともトーマの苗字知ってる?」

「トウマさんの苗字…………笠木、でしたっけ?」

「私もそう記憶してますけど……」

「うん、そう、笠木。じゃあその苗字、どっかで聞いた事ない?」

その言葉に少し間を空けて、シルとティリアは目を見開く。

「まさか」

「笠木…………ソウゲン、ですか?」

「そう。笠木ソウゲン。現状討滅不可能とされている人型魔獣。それがトーマのお祖父さん」

ルリはちらりとトウマを見て伺う。

トウマは軽く手を振った。

「そっから先は俺が言うか。あのクソジジイが五年前に魔獣化してな、姉貴と妹を殺したんだよ」

シルとティリアは声を失い、ルリは静かに顔を伏せた。

「俺の家族は親の実家の静岡に、まぁあいつの家に帰ってたんだ。で、俺は偶然その日のその時遊びに出てて、帰ったら姉貴が倒れてて、あいつが妹の首を絞めてた。俺はそれを見て、怒り狂って突っ込んで────」

そこで言葉を切って、苦笑。

「──殺された。あいつの左手の一振りで脇腹抉られて吹っ飛んだ。それだって姉貴が俺を庇って攻撃の大部分を受けてくれたからだ。それが無けりゃ身体真っ二つだっただろうな」

シルとティリアだけでなくルリまでも青ざめてトウマの顔を見つめる。

「んで姉貴が死んで、結局脇腹抉られた俺も最終的には死ぬしかなかったんだが、それでもなんとかしようとして身体起こして、戦おうとしてたらな、首絞められたまま妹がこっち見て、手を伸ばして、そこで切れた」

「切れ、た…………?」

辛うじてシルが問いかけた。

「あぁ、記憶な。そこで途切れて、目が覚めたら家からちょっと離れた山の中にぶっ倒れてた。傷も治ってて、それから家に戻ったら家は全焼してて、妹が居た辺りには、いつも妹がしてた髪留めが焼け焦げて落ちてた」

トウマは淡々と語る。

「それから魔力量が跳ね上がってるのに気づいた。他のマスターと比べても桁違いな程の魔力量だった。だからこの、姉貴と妹がくれた力であのクソジジイを討滅すると決めた。つまらん自己満足の復讐だがそれでも良いと思ったんだ。あいつだけはな、あのクソジジイだけは」

トウマのその先の言葉は、その場の三人には聞こえなかった。

いや、三人とも、聞く事を無意識に放棄したせいで声が聞こえなかった。

しかし、トウマの口の動きから、放たれた言葉は確実に聞き取れた。


「────必ず、殺す」


その瞳にはハッキリと失望と絶望、そして後悔。

それらの昏い感情を綯い交ぜにした、どす黒い、復讐の光が宿っていた。

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