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4,模擬戦用アリーナ 観客席

「っと、あぶね」

気を失って倒れかけたシルをトウマが抱えて座席へと座らせる。

「…………トーマ?一応斬る前に聞いてあげる。なにしてんの?」

「ちょっと待て落ち着け死んでねえし殺意はねえし害意もねえし悪意もねえ!」

居合の構えを取り、魔力を奔らせたルリにトウマは慌てて待ったをかける。

「いきなりやったのは俺が悪いが仕方ないんだよ。今のは継承っつう儀式的なやつでな。シルが自由にジークフリート使えるようにしたんだよ。傷無いだろ?」

トウマの言う通り、突き刺したはずのジークフリートは跡形も無く、傷も無い。

「事前になんか言うことがあるでしょうがッ!」

「言いたいのは山々なんだけどな!同意を得た時点で継承失敗すんだよ!」

「なにそれ不便使えなッ!?」

「やかましいッ!」

騒ぐ二人をしかし周りの生徒は気にしない。

「だいたい偽装術式なんて組む暇あるなら私には言えたと思うんだけど?」

「めんどかった」

「ぶっ殺すよ?」

逃走体勢に入るトウマ。

抜刀寸前のルリ。

存在に対する偽装術式の効果が薄れてきたのか、ちらほら気付き始めた生徒がいる中で対峙する二人に間の抜けた声が挟まれた。

「ぅん…………ん……?あれ……私寝て…………?」

「あ、起きたか。おはようシル。寝起きに突然で悪いがちと試してくれ」

「試す……?なにをですか?」

「あー、えーっとアレだ。ちょっとジークフリート出してみてくれ」

「はい?」

「ジークフリート、シルが自由に使えるようにしたから。イメージして、両手を振って掴め」

「はぁ…………?」

状況が飲み込めていないシルは取り敢えずジークフリートをイメージしながら腕を振った。

「…………出ないけど」

ルリの言葉通りシルの両手は空だ。

「んー、ちとイメージが不完全だな。魔力の収束はあるけど固定出来てないって事はイメージが安定してないって事だからな」

「申し訳ありません…………」

「やっ、違くてな!?シルが悪いんじゃなくていきなりやらせた俺も悪いってか、そもそも不壊剣なんて高度なモン生成するのはかなり難易度高いからな!?」

「ですが…………実際出来てませんし…………」

落ち込んだシルは簡単に立ち直れなかった。

「どーにか出来ないの?なんかあるでしょう、そういう時の対処法とか解決法とか」

「ま、あるにはあるけど」

その言葉にシルが顔を上げた。

「あるんですか…………?」

「あるある。マジで」

少しシルの目に光が戻ってくる。

「まー簡単で一般的な事だ。イメージが足りないなら補強すればいい」

「補強、ですか?」

「そう、補強。正確には詠唱だな。普通は術式そのものに使うもんだが一応効果はある。言の葉をキーにして作ればかなりイメージは安定するはずだ。もちろん詠唱は自分で設定しないと効果がない。出来るな?」

「はい!」

「んじゃ頑張れ」

そう言って召喚したジークフリートをシルに渡した。

そして受け取ったシルがブツブツと呟き始めたのを見て再び偽装術式を施した。

普通に見れば不審人物以外の何者でもない。

「そういやルリ試合は?」

「ん?この次だよ。特に強い人でもないけどね」

「強かろうが潰すだろお前」

呆れたように応じるトウマにルリは意地の悪い笑みを浮かべる。

「トーマは安心して勝ち上がってくるといいよ?」

「やかましいわ。とっとと行ってこい」

「はいはい」

へらへらと歩き出したルリを見送ったトウマはシルへと目を向ける。

「────黒鉄……龍…………ジークフリート………騎士……………刃………」

イメージを掴む事に没頭するシルを少し心配してから、トウマは眼下で行われている試合を、正確にはその片方の生徒を観察する。

一人の女子生徒が刀を持つオートマキナと共に相手のマスターへと斬りかかる。

しかし女子生徒とオートマキナ、それぞれの斬撃は途中で防御へと切り替わる。

攻撃を仕掛けたのは二メートル程度の竜型オートマキナ。

そのマスターは少しくすんだ金髪を肩のあたりに切り揃えた少女。

訂正、普通に見れば、幼女。

「ティリアか…………ホント強いなあいつ。学年一位は伊達じゃないってか」

「あの子が学年一位なんですか?」

「お、シル?詠唱はもうできた?」

「はい。恐らくは大丈夫かと」

「そうか……で、ティリアの事だっけか?間違い無く学年一位だよ。ま、学年最年少でもあるけどな」

ティリア・クレバー

近年稀に見る評価SS生徒が多いこの学年でも飛び抜けた才能を持つ。

使役するサーヴァントは竜型オートマキナ「レーヴァテイン」と「リヴァイアサン」の二体。

基本的に武装型以外のサーヴァントはその構造が人体から離れれば離れるほど扱いが難しい。

そのサーヴァントを二体同時に使役する事が、そのまま彼女のケタ違いの技量を示している。

しかしながらその年齢は見た目を裏切らずに十一歳。

様々な年の生徒が居るこの学園でも異常な年齢でトウマ達の学年に在籍している。

主な理由は二つ。

一つは圧倒的な強さ。

もう一つは知能の発達速度。

ティリアは十一歳にして既に二十歳前後のレベルの知能を獲得している。

「あいつは俺とは違って間違い無く天才だよ。俺みたいな欠陥品じゃない、完成してる」

「トウマ様…………?」

トウマの瞳にはハッキリと羨望と嫉妬が浮かんでいる。

これは普通だろう。

しかしその奥に、微かに失望と絶望、そして後悔。

その時、バキリと硬いものが砕かれる音が鳴り響き、歓声が上がる。

シルが目を向けると、砕かれた刀と膝をつく女子生徒とサーヴァント、静かに立ち去るティリアの姿が見えた。

そして目を戻した先、トウマの瞳はいつも通り、気怠げな様子を見せていた。

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