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はじまり~日常のふたり~
はじめまして。福井日向といいます。
完結できるように頑張ります。
下手くそですが、どうかお付き合いを。
「なんもないとこね、ここは」
国本律香は、風に揺れる稲穂を眺めながらそう呟いた。
「そんなこと言わんといてや。俺は、都会が苦手なんや」
その隣では、沼田秀平がタバコをふかしていた。
「違う違う。バカにしてんのとちゃうんよ。
なんもなくて静かで、ええとこやない」
律香は笑って言った。
「ずっとそうや、ここは。俺が生まれた時から田んぼばっかり。
何一つ変わっとらん」
「へーえ。ええね、そういうの。変わらん風景っていうか」
「せやなぁ…」
二人の、何気ない会話。
これから一緒になる二人の、平和な会話。
うちらの思いも、ずっと変わらんとええね。
そんなセリフが頭に浮かんで、律香は思わずプッと吹き出した。
「ん、なんや?」
「なんでもない。ただ…」
「ただ?」
「もうすぐ、沼田律香になるんやなぁって。
思っただけよ」
秀平の顔がすぐに赤く染まっていく。
それを見て律香はまた笑うのだった。