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ホラー

とりあえず、死んでください。

作者: 藤堂家鴨

 ただの不可思議なお話です。

 

「とりあえず、死んでください」


 と、言った。


 初夏。

 それは、とても鬱陶(うっとう)しいものであり、僕にとってはあまり、いや、全然よくない時期。僕は夏が嫌いなのだ。この夏と言う漢字と暑さと、そして空気。すべてがすべて、嫌い。嫌いでたまらない。

 元々、僕はこういったイベントのような季節は嫌いだ。

 僕にとって、世界はこの六(じょう)だけ。それ以外は存在しないと思っているし。存在してほしくない。ただ、この六畳という空間しかこの世界にないとすると、僕はどうやって生きているのかという疑問にぶち当たってしまい、結局、六畳以外の世界も認めている訳だが。じゃないと、生活できないし、僕という政府から守られた存在は存在しなくなる。

 だから、僕はしぶしぶ認めている。外の世界を。

 今日もまた、朝になった。

 外と遮断している真っ黒なカーテンの破れた隙間から朝日という名の光線が僕を殺そうとしてきた。あぁ、嫌だなとか独り言を呟きながら僕はそこを近くにあった座布団で覆う。いつの間にか日課になってしまったことだけれど、まぁいい。これが、僕の朝の運動だ。

 馬鹿馬鹿しい、と思っただろう?

 仕方ない。この高級民族という名の引きこもりの僕が・・・・・・いや、軽い自慢というかそんな感じになってしまったが、まぁ、いいんだ。それが、僕の生活、そして生きている世界だ。

 時計を見ると、六時〇〇分ぐらいだった。

 そういえば、と僕は思って僕が好きなキャラクターのカレンダーに目を向ける。

 今日は、六月二八日。まだ、梅雨明けしていない夏だ。体中からよくわからない体臭を放っている。これはいけない、と思った僕はゆっくりと立ち上がると、骨ばった足でバスルームという名の公衆浴場に行くことにした。

 いまどき、公衆浴場なんてない。いや、あるかもしれないがなかなかない。

 そんなこと、僕が知ったこっちゃないけれど。


 ♯


「とりあえず、君、死んでくれないかなぁ?」


 公衆浴場からの帰り道だった。

 突然、めちゃくちゃ可愛い声に声をかけられた。萌え、だろうかと神経をあたりに張り巡らせて感じてみるものの、よくわからない。あぁ、こうなったら振り向こうとか思って振り向いてみると、そこには一人の少女がいた。

 中学生ぐらいだろうか、長い黒髪を二つに結い腰までたらし、猫のような大きな黒い瞳はじっと僕を睨んでいる。つり上がった眉はどうも、怒っているようだったが、少し曲がった小さな口はそれを引き立てることしかしていない。身につけているタンクトップは平べったく、胸はないようだ。そして、短パンからのぞく細い足。これがツンデレだったら相当だな、とか思ってしまった僕がいたわけだが。

「アナタ、選民主義的思考を持ったこの世界の(ごみ)でしょう?なら、死になさいっ」

 あぁ、今僕は天に召された気持ちです。

 こんな理想なペッタンコ娘に出会えるなんて・・・・・・。

「聞いてる?ねぇ、聞いてますっ?」

 猫目が僕を覗く。

 その時、僕はテンションが高すぎてすでに自分の世界に入っていた。

 しかし、それはこのペッタンコ娘によって強制送還される。

 まぁ、肘鉄を食らったといことだが。

「あのねぇ、アナタ。聞いてました、アタシの話を」

「いや?」

 僕はいまいちこの状況についていけず、ぼぅっとこのペッタンコ娘を眺めていた。肘鉄を食らった細い腹が痛い。

「あのね、アタシはアナタに死んでほしいの。いい?死んで。今すぐ、死になさい」

「どうしてよ?」

「簡単。だってアナタは死んでも同然のクズ野郎だから。税金泥棒、とでも言った方がいいのかな。とにかく、死んで。今すぐ、アタシの前で」

「はぁ?」

 少し切れてみる。これでも、僕は男だ。一人立ちはしていないけど、このペッタンコ娘よりは年上だから。

「なんで、死ななきゃいけないんだよ、僕は。僕の人生に文句言うなっ、このペッタンコ娘がっ」

 思わず言ってしまったな、と言った後に後悔した。しかし。口に出したものは修正できない。仕方ない、仕方ないと呟きながら僕は息を吐いた。

 何の攻撃でも受けるつもりだった。しかし、ペッタン娘はうつむいたまま負のオーラを出しているだけだった。しかし、

「死ね」

 と、誰かが僕に言った気がした。次の瞬間、僕のあばら骨が覗く腹に激痛が走る。そして、僕はそのまま意識が飛んだ。


 ♯


「ここからなら、死にやすいだろう?」

 そんな囁きで僕は目覚めた。

 目を開いた瞬間、太陽の光が調節できず、虹色の光が時たま視界によぎる。それが、慣れてきてもなかなかここがどこなのか、今は何なのかが分からなかった。

 ただ、ここがビルの屋上ということだけが分かった。そして、僕は縛られていた、古びた鉄柱に。

 そこからの眺めは絶景だった。

 目の前に広がるビルはまるで鉄の森みたいで、まるで僕が望んだゲームの世界のよう。目を凝らすと、見覚えのあるビルが結構あった。あぁ、ここは僕が住んでいる場所とさほど遠くないところかとなぜか安心したが、この状況は安心できるものではない。むしろ、逆。安心なんてできるわけがない。僕の足はほとんど浮いている。そもそも、鉄柱があるから僕は落ちないわけでこの鉄柱に吊るされていなかったら僕は確実に落ちる。しかし、この古びた鉄柱には信頼性がない。ときどきたてる奇妙な音は僕を不安にさせた。

「どうだい、死にたくなったか?」

 その声は、あの少女の声だった。そういえばと思いだすと、僕が目覚めたその声もその少女、ペッタンコ娘だったこと思いだす。その時、僕ははっと思った。そうだ、腹・・・・・・僕は腹を・・・・・・と思って自分の腹を覗くとそこには何もなかった。ただ、着ていたT-シャツがあるだけだった。

 僕は疑問しか湧かなかった。

 ――どうしてこうなったか?

 その答えはペッタンコ娘しか知らないと思ってみたが・・・・・・しかし、そんな問いはすぐに解決された。

「アタシがね、ここまで運んであげたの。アナタが暴れるからさ、丁度いい死に場所を見つけてあげたわけ。護身用に持っていたスタンガンが役に立つとはね。ま、しかし、早く死んでくれない?アタシ、アナタを見ていたくないから。この、税金泥棒」

「ど、どうして僕に死んでほしいんだっ」

 はんっ、とペッタンコ娘は鼻を鳴らした。

「死なないと、二次元に行けないじゃないか」

 二次元、というワードに反応してしまった僕だがその意味がいまいち分からない、と首をかしげると、ペッタンコ娘が続けた。

「じゃあ、アナタ。アタシのこと誰だと思う?ペッタンコ娘?ふざけんじゃないよ。アタシ、知っているでしょう?アヒルよ、アヒル。アナタの好きなキャラクターだってば」

 僕は必死にそのアヒルと名乗ったペッタンコ娘を見ようと体をねじった。

 たしかに、アヒルだった。

 僕が嫁に貰いたいとさんざん願った少女、アヒル。

 黒髪、猫のような目、アヒル口が特徴のツインテール。そして、ツンデレ。ペッタンコな胸もその通りで、まるで映像から出てきたアヒルだった。そして、傍らには、家鴨。このアヒルという少女は、家鴨といつも一緒にいるという設定であだ名がアヒル。で、アヒルという名になった僕が激愛するキャラクターだった。

 僕はそれが分かった瞬間、天に昇った気分だった。コスプレではない。本物の、アヒル。まさか、こんなことがあるとは・・・・・・。

「で、死んで。はやく死になさい。死んだら、彼女になってあげるから」

 そう言いながら、アヒルの細くて白い指が僕の頬を撫でた。顔が近い・・・・・・そう思った瞬間、糸が切れた。


 そして、僕は落ちた。


 永遠と続くジェットコースターに乗っている気分だった。街が、すべて映像のように見える。ノイズが走り、七色が僕の目の前を過る。


「とりあえず、死んでください」


 と、アヒルが言った気がした。

 そして、僕は再び意識を失った。


 ♯


 アヒルとその友達、ネコ(=^・^=)がいる。

アヒル『今日は、アヒルの結婚相手を紹介するよぉー』

ネコ(=^・^=)『結婚相手?早すぎない?』

アヒル『ううん。アタシ、もう、一六だもん。結婚できるじゃんっ』

ネコ(=^・^=)『でも、相手は?』

アヒル『一八のアタシのファンだよ。ね、もう、結婚できるでしょ?』

ネコ(=^・^=)『年上かぁー。で、やったの?』

アヒル『えへへ、それは内緒。秘密、だよ』

 そこで、アヒルの彼氏登場。

彼氏『どうも』

ネコ(=^・^=)『えー、君がアヒルの彼氏さん?』

彼氏『えっと、まぁ、そうなります』

ネコ(=^・^=)『意外と、かっこいいんですね。驚きw』

彼氏『いやいや、どうも』

ネコ(=^・^=)『で、ぶっちゃけ聞きますけど・・・・・・出会いはっ?』

彼氏『それは、えっと』

アヒル『あははw内緒ですよ。そうしたら、自殺者が増えてしまいます』

ネコ(=^・^=)『へ?自殺?』

アヒル『なんでもないですよー』

 さて、お時間がやってまいりました。

アヒル『時間だって。じゃあ、また来週ー(@^^)/~~~』

ネコ(=^・^=)『えっ、ちょ』


 END

 けなしてすいません・・・・・・そして、「死ね」「死ね」言ってすいません・・・・・・

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