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C6-6 新たな兆し


 やっぱり二人の掛け合い(漫才)描いてるときが一番楽しい作者なのです。


 ───それは、とある林の中を歩いていた時の事。



「……ん?」

《……ユズちゃん? どうかした?》


「いえ、今何か……あちらの木立の向こうに何があるか、ちょっと見てきてもらえませんか?」

《ほいほい了解。いえす(Yes)ゆあ(Your)はいね~す(Highness)


「……誰が殿下ですか」



 ・ ・ ・



《───ただいま~》

「おかえりなさい。どうでした?」


《うむ。商人の一行らしき方々がゴブリンの群れに襲われてました。いやぁ、ベタだねぇ》

「…………ちょっと頷きそうになったじゃないですか。手助けは……要らなそうですね?」


《まあね。戦力比的に9:1……いや9.9:0.1ぐらいはあったかもしれぬ。しっかり護衛を揃えた堅実な商人さんだったようで。……にしてもよく分かったね?》

「ええ、何だか声が聞こえたような気がして……あの一瞬だけでしたけど」


《あ~……馬車の中で商人の娘さんらしき小さい子が結構怖がって悲鳴上げてたし、それかもね。あれぐらいの子供の泣き声ってめっちゃ響くから……》







 ───またとある街の、夕暮れ時。



「……んぇ?」

《おう、どしたいユズさんや。くしゃみかい?》


「んん、そういうわけでは……ちょっと、向こうの……路地裏かな? 調べてきてくれますか?」

《あいさ任せんしゃい。いえす(Yes)ゆあ(Your)まじぇ~すてぃ(Majesty)


「……誰が陛下ですか」



 ・ ・ ・



《───ただいま戻りました。いつもあなたの隣にレインさんです》

「おかえりなさい。……何か、あったみたいですね?」


《そうだねぇ……必死の形相で天を仰ぎ『助けて、死にそう』と叫びを繰り返す少年が一人》

「っ、いったい何があったんですか!? わたし達が力になれるようなら───」



《明日、彼女と初デート。眠れない。心臓飛び出る。死にそう。神様助けて。……だそうですが、本当に助けに行きますか?》



「…………いや行ってどーしろと。手に余るどころじゃありませんよ」

《だよねえ。頑張れ青少年以外に言えることがない。あるいは寝かしつける(物理)ぐらい?》


「やりませんからね? というか何で路地裏に出てまで叫んでるんですか。そういうのは家の中で黙って悶えるべき……なのかなあ?」

《さあ? まあ悶えとる内に、外の風に当たりたくなったんやろ。……見てる間に近所迷惑だって母親らしき女性に殴られて回収された彼の、今後の御多幸をお祈りするとしましょうかねー》







 ───またまた明くる日の、宿の一室にて。



「…………んん?」

《お、どしたどした? 何だか溢れ出る既視感ですぞ》


「……窓の外、向かいの家……の三軒隣、かな? ……頼めますか、レイン?」

《具体的。よっしゃ任せな、壁に耳あり障子にレインさんよ! どこにも障子なぞ無いけどな!》


「脊髄で会話するのやめません? 脳を使ってください脳を」



 ・ ・ ・



《───ただいまレインさんの帰還を報告するですよー……》

「行きとの落差。……いったい何を見てきたんですか?」


《それがなんとも、何やらうんざりした様子の少女が独り言を呟いてる場面でしてー……》

「……なんか嫌な予感がしますけど、内容は?」



《荷物持ちに呼んだだけの男が彼氏面してきてウザい。正面から『そういうつもりじゃない』って言ったのに通じてる様子が無かった。これから先、しつこく言い寄られる気しかしない。まだまだ特定の男と付き合うつもりなんか無いのに……いっそのこと、揉めてるところをイケメン高収入なお兄さんが颯爽と助けてくれたりしないかなぁ、とのことですだ》



「とりあえず昨日の少年が全くの無関係であることを切に願っています」

《私も願っています。主に世界平和の為に》




        ◇ ◇ ◇ ◇ ◇




 ───この世界はスキル制採用のテンプレファンタジー異世界である。


 転生時に希望した条件に最も近い世界がここだった、というのが私の認識だ。

 少なくとも大きく外れてはいないだろうという確信もある。


 そしてステータス表示的なのもある。えらくシンプルだし、いつでも見れるものじゃないが。

 大きな街になら大概備えられている、神がもたらした品、その名も『鑑定石』に触れることにて閲覧が可能───この辺すっごいゲームっぽいんだよなあ、この世界。まあ、それはともかくだ。


 そこには『魔法スキル』を始めとした様々な『才能』が表記されており、それを参考にして将来目指す職業を決めたり云々と、この世界の人々にとっては意識に深く根差した常識の一つ。

 転生一歩目にして派手に蹴っ躓いた私には、どうにも縁が薄いモノになってしまったわけだが、そこんとこも今は横っちょに置いとくとしてだ。



 今回重要なのは、この世界におけるスキルの扱い。

 とりわけ生まれつき持ってるものと、後から発現するものがあるという点である。


 この追加発現なる現象、基本的に滅多に起こるものではないらしい。

 実際に経験したという者の体験談もまた「いつのまにか増えていた」という言に終始するため、何が要因で、どんな時に、といった情報は殆どが謎のままとのこと。



 ……では、そうした追加発現発覚の経緯や如何に?


 勿論、折に触れるたびに再鑑定を繰り返す人間も居るには居るというが、滅多に起きない事象を期待してそう何度も、というのはやはり稀である。端金とはいえ手数料もかかるし。

 ゆえにやはり、何かしらの『兆し』を感じた際に、という方が一般的であるからして。




《───てなわけで、ここ最近何やら連続した『虫の知らせ?』を『兆し』と捉えて『鑑定』しにやって来たわけだが、ユズちゃんや。……結果は、どうでしたか?》

「…………」



《……あ~、一応と思って私も確認したよ。相変わらず意味不明なままだったね。変化と言えば、年齢の数字が倍ぐらいになってたぐらいで……え~と》

「………………」



《…………鑑定画面、横から拝見させていただいても、よろしくて?》

「……………………はぃ」



 声ちっさ。……どないしたんよ、ユズちゃんや。

 『鑑定石』に触れた瞬間、ビシッと音が聞こえるぐらいに硬直してたけど、そこまでショックを受けるような鑑定結果とはいったい───






---------------------------------------------------

 名前 : ユズ

 種族 : 人間

 年齢 : 15

 スキル:『火魔法』、『水魔法』、『救世者』

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 ……おぅ。



《…………いつの間に誕生日来てたのー? 教えてよー、もー》

「今そういうの流せる余裕無いので黙ってもらえます?」



 ふぁい。









 ───この世界に経験値やレベルといった概念はあるのだろうか?

 これについては私の持論になるが、あるのだと思う。きっちり数値化されてるかは別として。


 モンスター相手、人相手を問わず、長年戦いに身を置いた人間は次第に人間離れした身体能力を得ていくという話はあるらしいし。

 また先のスキル追加発現に関しても、大量のモンスターを一度に討伐した時や、過酷な戦場から帰還を遂げた時……といった節目に確認された事例も多いとのことなので。


 様々経験を積んで、重ねて、所謂壁を越えた(レベルアップした)結果。

 あるいは実績、称号、何かしらの条件達成───そんな何某が実装されているのだと思われる。

 ……以前、創世神(シャニム)さんが世界全体をプログラムに例えたことも併せて考えるにね。



 では、それを踏まえて今回の事態を考えてみましょう。

 いやあ……『救世者』と来ましたか。何とも凄まじい字面のスキルだよねえ……。


 過日のアレコレからして『助けを求める声が聞こえる』とか、そんな感じの効能だろうかね。

 ここは何が要因でこんなものが生えてきたのか、腰を据えて考えようではないか。


 というわけで……ユズ君、落ち着きたまえ^^。



「すごく落ち着……けるわけないでしょう、レイン!?」

《それでもネタを拾おうという努力は惜しまない。そんなキミが大好きです》



 さて最初に考えるは、最近倒したモンスター等々。……こないだのゴブリンぐらいか。ハイ次。

 他にこんなスキルが生えるような何某を討伐した記お「ありませんよ!?」……だよねえ。


 では次に候補に挙がるのは実績の方だね。"世"界を"救"った"者"と認識されるような何某の。

 ……そっちも心当たりなんか無いです、と言いたげだが、いやいや考えてもごらんよ?



《かつての文明を滅ぼし、現代でも大陸を覆う可能性すらあった死病の伝染を未然に防いだ》

「……? …………えっ、あ、それは……」


《国の未来を担う若者を中心に、人心を意のままにしていた曲者を追い払ってみせた》

「……っ! で、ですからそれも……」



 私がつらつらと重ねた実績に一度首を傾げて、直後思い当たったか彼女が息を呑む。

 まるで与太話のようだが、どちらも現実にあった事なのだ。時期としては半年ちょっと前か。


 あくまで最悪を考えればではあるが、どちらも一国(以上)の将来を大きく左右した大事件。

 その解決を以て『実績』と数えられたとしても、そこまでおかしな点はあるまいて。



 私が案外落ち着いてた訳が分かったかね? いや、驚いたには驚いたよ? 勿論。

 それぞれ単体だと『世界』規模かは怪しいが……合わせ技一本的なアレだとすれば、まあね?

 遂に我が相棒が世界から認知されたかと、そういう方向の感想も出るわけですよ、はい。



「だ、だからっ、それもこれも、レインが……」

《いや、どっちの時もユズちゃんが居なきゃ私にはどうしようも無かったからね? マジで》


「…………なんで、今になって、なんですか……?」

《ん~……誰の実績にすべきか世界さんも審議中だったとかじゃない? 知らんけど》


「だったら、そこは、レインに……! わたし、『救世者』だなんて、重……!?」

《いやあ、私は無理やろ。表記的に評価対象(システム)外というか……それにほら、元々『調教』スキルって触れ込みにしてるソレコレといい、他人に『鑑定結果』を見せられない理由はあったわけじゃん。そしたら実情としては別に何も変わらんっしょ?》



「…………そうなんですけど。……そうなんです、けどぉ……!?」



 理解はすれども出来れば納得はしたくない。そんな様子で懊悩するユズちゃんです。

 いやはやしかし、そこまで恐縮するものでもなくないかい? 別段、そういうスキルを持ってるからって、どこぞで徴集される事態になるでもなし、そもそも明かす機会だってないでしょに。



「……へ、返品……返品窓口はどこに……?」

《……あんまりアレなら女神(シャニム)さんに問い合わせてみる? ただし方法は鬼電一択である》


「やめてください(胃が)しんでしまいます」



  レインさん「……まあ、こういうの把握してはるかも怪しいけどね、

        あのウッカリ女神様」



ウッカリ女神様「……なんか今、誰かに貶されたような……いや、そんなことより

        修正作業よ!」


ウッカリ女神様「ああもう! 何で急に『聖女』スキルが消失しちゃったのよ!?

        実装から数百年間、何のエラーも吐いてなかったじゃない!?」


ウッカリ女神様「鑑定ログにだって何も異常は……あれ?

        なんか『聖女』スキル保有者の時だけ挙動が怪しい……?

        まるで魂を二重に読み込んでるような……?」


A. そういうとこやぞ。



Q. しかし何故に『救世者(メサイア)』?

A. そら(創世神をテコ入れ(勇者&聖女)に踏み切らせた存在を単独で消滅させたら)

  そう(救世になる)よ。


Q. 割と神っぽいムーブしてたヴィクティーマ様と、

  ガチ創世神なシャニム様って関わり無いの?

A. 前者が「神設定のNPC(キャラ)」だとすれば、

 後者は「パソコンの前に座ってるプログラマー」です。

  某「画面奥からプログラマーに鬼電してきたバグ関数さん」とは違うのです。

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