1-(5) 月明かりの中
すべてフィクションです。
よろしくお願いします。
暗闇に包まれて、フクロウが鳴いた。
窓横に腰かけている見事な黒髪の青年が、それを仰ぎ見た。
フクロウは窓の外に植えてある木にとまって、かすかな物音、物陰、気配を感じ逃さないように、全神経を研ぎ澄ませている。
青年は目を細めた。
別に眩しくはないが、それは自分にとって、瞼を全開にして見られるような、それはちっぽけなものなんかじゃなかった。
僕はそんな生命達に、畏敬の念さえ抱いている。
何の為、誰の為、そんな周りの存在なんか気にせず、ただ自分の衝動、本能の導くままに、自分は動き回ってみたかった。
『人間にしかできないこと』、それは無数と言っていいほど存在する。だがそれ以上に『人間にはできないこと』が多すぎた。
――――いや、そうじゃない。
『人間にしかできないこと』の犠牲として、『人間にはできないこと』が生まれてしまったんだ。
さまざまな束縛を代償としてまで、人間は何を手に入れたかったのだろうか。
生じたのは、束縛、因縁、金、富、名声、そして・・・・・・
青年は腰かけていた窓横から、スラッと飛び降りた。
ストレートの黒髪の上を月の光が、つややかな波として映しだした。
――――考えても仕方ない。
青年は顔をしかめた。
――――僕にはもう、どうする事も出来ない。できるとすれば、おそらくはこの・・・・・・。
ユキは隣のベットで眠っている、もう一人の青年を見た。
――――新しい、ルームメート。
青年は、そのままベットの上に寝転がると、月明かりに映し出された天井を無意識に睨んだ。というよりは、これから先の時間を見つめていた、と言った方がいいのだろうか。
青年はフッと、自分の後ろめたさを嘲笑った。
――――寝よう。もうおそい。
青年は新しいルームメイトに背を向けると、目を閉じた。
そのままゆっくりと、そして確実に深い眠りに落ちていく。
フクロウはいつの間にか、風に流されてどこかへ行ってしまったようだ。
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