友導(ともしるべ)②
Round1は、駅から徒歩5分の所にある。
それに大きな駐車場、シャトルバスも完備しているので交通の便には困らない。
着いはいいが、何をするんだ?
やっぱり、ここといえばボーリングだろうか。
亜貴なら何か策があると思っていた。
「何をするんだ?」
「何も決めてなかったよ、ごめん」
訂正しよう、策など無かった。
いつも俺達を統率してくれるのに今日は何故こんなに調子が悪いのだろう。
いつもと違うので思わず拍子抜けしてしまう。
「お前、風邪でも引いたのか?」
「風邪なんて引いてないけど…心配は無用だぜ」
「京介も今日の亜貴がなんだか変だと思わないか?」
「ここまで計画性が無い亜貴は初めてだ」
京介も今日のアイツに疑問を抱いていた。
やっぱり、今日の亜貴は不自然だ。
心の何処かで、俺の感覚は節穴ではないのだと安心していた。
「お前、何かあったんじゃないか?話なら聞いてやるよ」
「そんな事はどうでもいい。ここまで来たんだからとことん遊ぼうじゃないか」
話を逸らされた。
絶対、何かあったのだろう。
他人に話せないような何かが…
「そうか。お前に心配事が何も無いなら良いんだけど…」
結局、ボーリングをする事になり支払いに行った。待ち時間が100分あったが、然程気にするほどでは無い。
待っている間に何をしようかと考えていた。
ゲーセンにでも行こうか。
同じ建物の中に色々な施設があるので飽きることは無い。
「ゲーセンに行かないか?」
「100分間、スマホ見ながら待つのも尺に触るからな…いいぜ」
「丁度、ゲーセンで待つのが良いと思っていたところだ。掲示板で、呼ばれたか確認できるしな」
こうして俺達はゲーセンへと足を運んだ。
ゲーセンと言えばメダルゲームだろう。
メダルも高くなっている。
不景気の波がこちらまで及んでいるのは迷惑だ。
1000円で180枚のメダルを購入した。
それを3人で山分けする。
さあて、何の台をしようかな。
山分けして1人、約60枚のメダル。
これをどうやって増やそうか計算しながら得意な台を選ぶ。
そんな中、亜貴が俺の隣についてくる。
何かに怯えて…昨日の彗みたいだ。
「どうしたんだ?」
「健司…一緒について行ってもいいか?」
ここで亜貴を突き放すのも俺の良心が許さない。
それに友として付き合いは良くしておきたいからな。
「一緒にやろうぜ」
救われたような顔をしている。
猪村さんも、彗もこうだった。
人は何かに救われた、と思って安堵すると自然とそういう顔になるのだろう。
俺もこういう顔をしたことがあったかもしれない。
こうして亜貴とお寿司屋さんのゲームの台に向かった。安いネタほど当たりやすく、高いネタで一発逆転できる。
「何を買おうかな?」
「ここは安いネタを沢山買うのが安牌だろう」
「今の所は、亜貴と同じ意見だ」
このゲームは、メダルでお寿司を買うんだ。
安いのから、高いのまで幅広い。
「さぁ、始まった」
寿司のネタがカジノのルーレットのように回っている。そして玉が自分の買った寿司のネタに入れば、その分のメダルが獲得できるというわけだ。
玉は全部で5つある。
まず、1つ目の玉が入っていく。
「外した」
つい、声に出た。
まだ4つも残っているんだから、まだ落胆するほどでは無い。
「俺もだ。次…次がある」
次々に玉が回ってくる。
「やった〜入ったぞ」
「外れた」
そんな会話を続けている内に俺のメダルは目に見えるように増えていった。しかし、亜貴のメダルは明らかに目減りしている。
遂に亜貴のメダルが底を尽きる。
俺に追加のメダルをせがんで来る。
渋々、10枚くらいくれてやった。
「ありがとな」
そうは言ったものの、まだメダルが欲しそうな顔をしている。欲深い奴だ…仕方がないから10枚追加してやった。
そんなこんなでメダルを維持し、友人にも分けながらゲームをするのは至難の業だと思い知らされて俺のメダルも底を尽きた。
メダルゲームが終わった頃に丁度、呼び出された。なんだかんだで、100分以上待たされた気がする。
「楽しみだな」
「お前だけには負けない」
ボーリングには、ドリンクバーがある。メダルゲームをしている間に乾いた喉を潤すために飲み干してやろうと思った。
◆◆◆
「よっしゃー!」
思わず、ガッツポーズをした。
1ゲームの5フレーム目。
ここに来て、ストライクを成功させたのだ。
ピンが心地良い音を奏でて倒れていく。
得意気な顔をしてドリンクバーへ向かう。
その矢先。
カーン!
「やっぱり亜貴は、上手いな」
「まぁ…何度も来ているから当然って言えば、当然だな」
亜貴が3回目のストライクを決めた。
俺達だけでは飽き足らず、周りの視線まで集めている。正直、ズルい。
ボーリングには何度も来ているようで、その度に腕を上げていると聞く。
こういう所で、陽キャ体質が羨ましいと思う。
「健司、こっちを睨んでどうしたんだ?」
「ちょっと、羨ましいなって」
1回目のストライクで得意気になって、恥ずかしくなった俺の顔を見てニヤけている。
「待ってろ。俺だって連続ストライクの1つや2つ決めてみせるさ」
3ゲームくらい経っただろうか。ストライクを取れる事はあったが、連続で取るのは難しかった。
亜貴はそんな事をよそにその後も何回も取っていった。畜生、こうやってムキになるほど感覚が鈍るのについつい力が入ってしまう。
3ゲームが終わったところで、待っている人がいるので退去の時間になった。連続ストライクという夢が次回にお預けになってしまったのは少々、いただけなかった。
「今度こそ連続でストライク取ってやるから待っとけ」
ボーリングを終えて、元々の目的であるカラオケへと向かう。連続ストライクを出来なかったストレスをここで発散するとしよう。




