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彗星のように  作者:
7/15

友導(ともしるべ)①

今日は、友人に誘われてカラオケへ行く日。

昨日、アラームをかけていなかったせいだ。

朝の用事をガサツながら済ませた。

待ち合わせの駅までひとっ走りする。


住宅街の風景は、高層ビル群に埋もれていく。

やっと、星ヶ嶺駅が見えた。

星ヶ嶺市の中心部にある大きな駅だ。

高層ビルが連なる中で一際存在感を放つ。

この駅には首都圏へ行く新幹線も通っているから便利だ。


人が多いからだろうか。

駅が近づくにつれて空気が薄くなるのを感じる。

田んぼが見え隠れする所に住んでいるせいだろうか。昔からこういう場所が苦手だった。


メールによると、ペデストリアンデッキで待つと言っていた。上っていくと、2人がワチャ、ワチャしているのが見えてくる。


「お~い、もっと走れ!」

「やっと来たか」

亜貴や京介が俺を呼び立てる。


「遅くなって、悪ぃ。亜貴、京介」

ここまで全力疾走してきたから、これ以上は辛い。

「ほんとにな、早く行こうぜ」

「そうだな」

俺は悶えそうになりながらも、2人に置いて行かれないようについて行く。


気づくと駅のプラットフォームに居た。

プラットフォームを風が何度も突き抜けていく。

少し肌寒い。


「何で、駅近のカラオケに行かないんだ?」

駅の近くにもカラオケなんて有象無象にあるのに。何故電車で遠出するような真似をしてるんだ?


「たまには遠くのカラオケ行ったって良いだろ。他にやりたい事があるんだ、まあ…付き合えよ」

「やりたいことって何だよ」

「それは…後で話してやるから」

今話せない事って、何事だろう?


「それよりお前のことだ。昨日、何かあったのか?」

何があるか問い詰めようとしたら、話を逸らされた。気になって仕方が無い。


「昨日は何もなかったよ」

祈祷の事をこいつらに話しても伝わらないだろう。それにこういう事は、他言無用だったけ。


「いいや、嘘だ。昨日、お前にメールしたら返信は来るどころか、既読すらつかなかったんだぞ。いつものお前なら秒で既読するくせに…」


「ちょっと、用事があったんだ」

「そうか、はぐらかすって事は俺たちには話しにくいんだな」

気まずくなってしまった。


「実はお前のスマホが親父さんに隠されたんじゃないなと思ってた。今日も来れるか心配してたんだぜ」

「ほんとにごめんな」

「非を認めやがった。ま、お前が遅れてくるのはいつものことだから気にすんな」


刹那、つむじ風が起きる。

それを押しのけるように電車が停止した。

ここはターミナル駅ということもあって、電車で人の出入りが激しい。


出る人がいなくなったところで乗り込む。

日曜日で、観光客とかが多いと思ったけど意外と席が空いている。座席に座れるのは、快適だ。


「お前ら、よく窓の外を眺めるの飽きないよな」

「まあ…一瞬で外の風景が変わるのは、見てて面白いし」

「そういうものか?」

亜貴が不思議そうに俺たちを見ている。


京介も俺と同じように物静かだ。

だから、京介とは直ぐに馴染めた。

一方で、亜貴は陽キャ体質。出会ったばかりの頃は、俺たちに付き合ってくれるのが不思議だった。


「どうして陽キャのお前が俺たちなんかに付き合ってくれるんだ?」

「それはだな…」

照れくさそうに頬を掻く。


「まあ…会ったばかりの頃は物静かな奴らだなと思った。でも、お前らと関わっていく中でこの関係が心地良くなったんだ」

「初めて聞いた気がする。そんなふうに思ってくれてたんだな」

俺も京介もそんな事を言った。


「俺たちはいつまでも友達だからな」

その言葉にどれだけ励まされたことだろう。


「それよりお前らは、『漂着した島で、巫女さんに助けられました』の最新話見たか?」

毎週土曜日の夜中に放送されている。

そして、俺を一文無しの危機に陥れたアニメだ。


「あぁ、勿論見たさ」

「見た見た」


まだ、3話しか放送されていない。

にも関わらず、原作人気のブーストのお陰でサブスクでは首位を取るほどの作品だ。


「ヒロインが怪異から主人公を守る構図が良いよな。俺も守られてぇ」

京介の趣味は悪いと思う。

本人には言わないが…

そういう癖に興味は無いが、親友の間柄なので一応頷く。


「分かる、分かる。俺もお前と同じ事を考えていた」

亜貴の人に直ぐ共感してしまう。将来、詐欺とかに引っ掛からなければいいが…

まあ…感受性が豊かなのは確かだ。

これのお陰で、あいつは俺達のオタク話にすんなり入ってきたんだもんな。


「健司はどうだったんだ?」

「俺!?」

「本当は見てませんでしたとか言うなよ」


ここで逸れにされる訳には…

「見てるぜ。勿論見てる」


「証拠は?」

凡人ならここで落城するんだろう。しかし、俺には兵器があるから大丈夫だ。

つい、笑みがこぼれてしまうな。


2人も迫ってきてる事だし、出してしまおう。


「どうだ!」


2人に1枚のスマホのスクショを見せる。

オーという歓声が上がった。俺の勝ちだ。


2人に見せた物とは、『漂着した島で、巫女さんに助けられました』のBlu-rayBOXの予約画面。

代金は引き落とし済みだからこの上無い証拠だ。


2人は何かに勘付いたのか俺から離れる。


「お前、それをいつ買ったんだ?」

「金曜だけど…どうかした?」

「今日、よく来れたな」

意味が分からないので頭を傾げていると亜貴が尋ねてくる。


「お前、一文無し何じゃないか?Blu-rayBOX高かっただろ」

「ふふ、俺を舐めてもらっちゃあ困りますよ。ちょっとバイトしてきたんで心配するな」

「バイトって闇バイトの事か?」

京介は不謹慎なことを聞いてくる。

「違うって、内容は言えないけど…」


「やっぱり…」

「本当に違うんだ!」


「2人とも。着いたぞ」

2人と喋っていたら時間が過ぎていた。

電車から降りる。

降り際、乗車する人が多く思えた。


この駅はまさか…

駅看板を見ると東星ヶ嶺駅。

星ヶ嶺大社前駅の一つ前じゃないか!


昨日、失恋の痛みを塗り替えた。

でも、この1年間ずっと星ヶ嶺大社に気乗りしない雰囲気を出してたからな〜

隙を突かれたか。


「これから何するんだ?星ヶ嶺大社へ御参りか?」

「お前みたいな勘の良いガキは嫌いだ。いや~一度言ってみたかったんだ」

亜貴はニッコニコだ。

「それは何より」

「お前の言うとおりだ。でもな、それは後でやる事に過ぎない」

「何処へ行くって言うんだ?」

「ラウンドワンさ」


Round1。それは星ヶ嶺市最大級のアミューズメントパーク。ボーリングにゲーセンがある。

一応、カラオケは入っていたな。


彗に貰った御駄賃のお陰で、財布の底に気にせず遊びたい放題。それにSuicaがあるから帰って来れるわけだ。

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