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観測者に見守られる屋敷で生きることにした ~静は世界を支配しない~  作者: 灯乃しんわ
第七章 静かな日常が世界に届く

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第五話 街の香りと思わぬ再会

その話題が出たのは何気ない食後のひとときだった。


「この辺りの旬の食べ物って、何かあるのかな」


静のその一言にセリナが少し考えるように首を傾げる。

「森の果実や今の時期なら保存食も多いですね。

 ただ……街の方が種類は多いかもしれません」


「フォルツなら露店も出てるわね」

アリアが思い出すように言う。

「季節ごとの料理があって、今なら『石焼きの肉詰めパン』が出回ってるはずよ」


「おいしいんだよ、それ」

フィアが即座に補足する。

「焼きたてを齧ると肉汁がじゅわって……」


その説明を聞いた瞬間、静の目がわずかに輝いた。

「……行ってみたいな」


静の言葉にセリナは微笑む。

「でしたら、以前と同じ形で行きましょうか」


病気療養中の商人

専属治療師

そして護衛


すでに何度も使われてきた、安心できる立場


こうして一行は近くの支配エリアコアを経由し、辺境の街フォルツへと向かった。


フォルツの街は変わらず活気に満ちていた。

石畳の通りには露店や屋台が並び、焼ける音と香ばしい匂いが

あちこちから漂ってくる。

人々の声が飛び交い、商品を並べる音が響く。


「わ……すごいですね」

セリナが周囲を見渡す。


「にゃ……」

ツキも鼻をひくひくさせている。

様々な匂いが混ざり合い、興味深そうに周囲を見回している。


そして――


「きゅ……」

あかねは静の腕の中から身を乗り出すようにして

ある屋台をじっと見つめていた。


平たいパンを石板に乗せ、中に刻み肉と香草を詰めて焼いている。

じゅうじゅうと音を立て、香ばしい匂いが立ち上っている。


「いらっしゃい! フォルツ名物、石焼き肉詰めパンだよ!」

威勢の良い声が響く。


「これか……」

静は思わず足を止める。


焼き上がったパンから、香ばしい匂いと肉の旨みが立ち上り

表面はこんがりと焼け、中からは肉汁が滲み出ている。


「フォルツ・ローフ、ですね」

セリナが小さく教える。


「じゃあ……皆の分も」


静は店主に声をかける。

「六つください」


「まいどあり!」

店主は慣れた手つきで次々とパンを焼き上げていく。

焼きたてのパンが一つ一つ紙に包まれて渡される。


一行は屋台の脇に設けられた簡易的な立ち食いスペースへと移動する。


「熱いうちに食べた方がいいわね」

アリアが言う


「いただきます」

静は一口齧ると、思わず零れる声

「……おいしい」


パンは外がカリッとしていて、中はふんわり

肉は柔らかく、香草の香りが口の中に広がる。


「でしょう?」

フィアが嬉しそうに言う。

「このパン、外は香ばしくて、中はふわふわなんだよね」


「肉の味付けも絶妙ですね」

セリナも一口食べて、満足そうに微笑む。

「香草の使い方が上手です」


リーアも頷く。

「シンプルだけど、完成度が高いわ」


ミレイアは、じっくりと味わいながら言った。

「この焼き加減……絶妙ね」


その様子を見て、あかねが静の腕の中で小さく鳴いた。


「きゅ……」

明らかに、食べたそうに鳴く


「あかねも食べる?」

静は少しだけパンをちぎり、肉が少なめの部分を選んで差し出すと


「きゅ!」

あかねは嬉しそうに受け取り、小さな口で一生懸命齧りだした。


「にゃ」

ツキも静の足元で見上げている。


「ツキもだね」

静はツキにも少し分けてあげる。


「にゃぁ」

ツキは満足そうに食べ始めた。


「あかね、熱くないですか?」

セリナが心配そうに聞く


「きゅ」

あかねは大丈夫と言いたげに鳴いた。


ツキはあかねが食べている様子をじっと見守っている。

まるで、ちゃんと食べているか確認しているかのようだ。


「ちゃんとお姉ちゃん、してるね♪」

フィアが小さく笑う


「ええ。本当に面倒見が良いわね」

アリアも微笑む


こうして一行は屋台の前で、フォルツ名物の肉詰めパンを楽しんだ。

焼きたての温かさと美味しさ

そして、何より皆で一緒に食べる喜び


その光景は街の人々の視線を自然と集めていた。

特にあかねとツキの可愛らしい姿は

通りかかる人々の目を引いているようだ。


肉詰めパンを食べ終えた後、一行はさらに街を散策し露店巡りを楽しんでいると

あかねが次の屋台へと視線を移しじっと見つめているようだ。


そこには蜂蜜色に艶めく美味しそうな焼き菓子


「……きゅ」


静はその視線に気づき立ち止まる。

「蜂蜜ナッツの焼き菓子か」


「甘くて素朴な味ですよ」

セリナの言葉に頷き一つ購入するとあかねに分けてあげる


あかねは嬉しそうに小さく鳴き、少しずつ齧りながら歩いていく。

ツキは横で見守るように歩き

ときおり「にゃ」と注意を入れている。

その光景を見ているだけで心が和む。


露店巡りを一通り楽しんだ後、アリアたちは冒険者ギルドへ向かうことになった。


「報告は私たちだけで済ませてくるわ」

アリアが言う

「静は、併設の食堂で待ってて」


「わかった」

静は内心、少しだけ胸が高鳴っていた。


冒険者ギルド

本や物語で何度も目にしてきた場所

食堂に入り飲み物を頼む


壁に貼られた依頼書

行き交う冒険者たちの会話


(……本当に、物語の中みたいだな)


そんなことを考えていると――

ギルドの入口が開き外套を羽織った女性が、やや急いだ様子で中に入ってくる。


その瞬間


「……ミレイア?」


聞き覚えのある声にミレイアが振り返った。


「……姉さん?」


一瞬の沈黙


周囲の空気がわずかに止まる


「フレイアさん……?」

アリアが小さく呟く


そこに居たのはルミエール王国冒険者ギルド本部

ギルドマスター フレイア


静は状況が掴めず、ただ二人を見比べていた。


「こんなところで会うなんて」

フレイアは驚きつつも、すぐに表情を整える。


「……あなたたち、無事だったのね」

その声音には、仕事以上の安堵が滲んでいた。


簡単な説明が交わされ、事情を知ったフレイアは静へと視線を向ける。

「あなたが……静さん?」


「はい」


「……噂より、ずっと穏やかな方ね」

そう言って、少しだけ微笑む


その後の話は自然と長くなり、気づけば日は傾いていた。


「今日はもう遅いですね」

静が窓の外を見ながら言う


「もし宿を取っていないようでしたら……

 よかったら、うちに泊まっていきませんか?」


一瞬、アリアたちが緊張する。


だが静は続けた。


「少し離れたところにありますが、ゆっくり話したいこともあるでしょうから」


フレイアは少し考えてから、静かに頷いた。

「……お願いします。実は……

 あなたたちに話しておきたいこともあって」


「それなら、ちょうど良かったです」

セリナも微笑む


仕事で来たはずの街で、思いがけない再会


それが、この後の流れを大きく動かすとは――

この時はまだ誰も知らなかった。

イメージソングを作成してみました。

もし興味を持って頂けましたら、曲を聴きながら読んでくれたら嬉しいです。

物語の方も順調に書き進めていますので宜しくお願い致します。

https://suno.com/@10monoshin8


カクコムでも先行掲載しています。

もし続きが気になって読んでいただける方が居たら下記のページでお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/822139842423376578

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