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観測者に見守られる屋敷で生きることにした ~静は世界を支配しない~  作者: 灯乃しんわ
第七章 静かな日常が世界に届く

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閑話 甘い香りと少しの行き違い

白い光に包まれた庭園の一角

静謐な空気の中、柔らかな風が花々を揺らしていた。


見渡す限りに広がる美しい庭には、色とりどりの花々が咲き誇り

小鳥のさえずりが遠くから聞こえてくる。

穏やかで、温かな光が庭園全体を優しく包み込んでいた。


石造りのガゼボの下

小さな円卓を挟んで二人の女神が向かい合って座っている。


ひとりは、透き通るような銀髪と金の瞳を持つ女神――ルーナフィリス

そしてもうひとりは、淡い炎色の髪を揺らす、火属性神――フレアリア


卓上には籠に盛られたキノコのキッシュと、小さな器に分けられた果実のジュレ。

キッシュはほんのりと温かく、香ばしい香りを放っている。

ジュレは器の中でひんやりと涼しげに揺れており、その透明感が美しい。

どちらもやさしい香りを静かに漂わせていた。


「……ふふ」

ルーナフィリスが、カップを口に運びながら微笑む

「今回のもとても丁寧で美味しいすね」


「でしょう?」

フレアリアは嬉しそうに胸を張った。

「キノコの香りも良いし、このジュレ……甘酸っぱくてさっぱりしてるの」


もう一口、と言わんばかりにフォークを伸ばす。

その仕草はまるで子供のように無邪気だった。


「相変わらず、あの二人は『生活の中で作る甘味』が上手ね」


「ええ」


ルーナフィリスは穏やかに頷いた。

「だからこそ、無理な干渉はしないと決めているのですが……」


その言葉にフレアリアの動きが、ほんの一瞬だけ止まった。


「……あ」

フォークを持ったまま、視線が宙を彷徨う。


「どうしました?」


「えっと……」

フレアリアは、少しだけ眉を寄せた。

「……もしかして、私の神託……」


ルーナフィリスは何も言わず続きを待つ。

静かにカップを置き、姉の言葉を待っている。


「『焔守護竜の誕生』って……」


「……」


「言い方、ちょっと……壮大すぎた……かも?」


沈黙


そして――

ルーナフィリスは、そっと息を吐いた。


「……ええ。今、世界側では"想像"が随分と先走っているようですね」


フレアリアは、はっとしたように目を見開く。

「え、そんなに?」


「ええ」

ルーナフィリスは静かに続けた。

「巨大で、危険で、世界を揺るがす存在ではないか、と」


「……えぇぇ……」

フレアリアは、がくりと肩を落とした。


「だって……可愛いのに」

小さく、ぼそっと零れる本音。その声には、明らかに落胆の色が滲んでいた。


ルーナフィリスは、思わず微笑んだ。

「あなたは、ちゃんと"嘘"は言っていません」

 ただ――受け取る側が、"神託"という言葉に、重みを乗せすぎただけです」


「うぅ……」

フレアリアは、キッシュを一口食べてから、少し元気を取り戻す。

「……まあ、でも……間違ったことは言ってない、よね?」


「ええ、守護竜が生まれたのは事実ですし」


「……そうよね!嬉しくて伝えただけだし!」

フレアリアは自分に言い聞かせるように頷いた。

それでもその表情には、まだ少しだけ不安が残っている。


その瞬間


「……いい匂い」

不意に、柔らかな声が風に混じった。


「……あれ?」

フレアリアが振り返る。


そこには、水色の髪を揺らす女性

水の属性を司る、穏やかな雰囲気を纏った女神ミラシア


さらに別の声が聞こえる


「甘味の気配が流れてきたと思ったら……」

風を纏うように現れた女性

その姿はまるで風そのもののように軽やかな佇まいの女神ウィスティア


「……やっぱり」

最後に土の気配とともに現れた女性

落ち着いた雰囲気を持つ、大地の女神ルートミア

「……隠してた?」


ルーナフィリスは少しだけ困ったように微笑んだ。

「……見つかってしまいましたね」


「ひどいわ」

ミラシアがじっとジュレを見つめる。

「こんなに綺麗で、美味しそうなのに」


「しかも、お供え?」

ウィスティアが目を細める。


「……ずるいわ」

ルートミアがつぶやく。


フレアリアは慌てて手を振る。

「ち、違うの!ほら、今回はちょっと話もあって……!」


「話?」

ルートミアが首を傾げる。

「……焔の子の話?」


その言葉に、フレアリアは一瞬だけ詰まった。

「……まあ、うん」


「なるほど」


ルーナフィリスはゆっくりと席を勧める。

「せっかくですから、一緒にどうぞ」

 お供えは、分け合うものです」

少しの沈黙の後――


「……いただきます」

四人の女神は、自然と席についた。


笑い声とカップが触れ合う音

甘味を囲む穏やかな時間

それぞれがキッシュやジュレを味わいながら、会話を楽しんでいる。


「……でも」

ミラシアがふと呟く

「焔の子がいるなら……他の属性にも

 いずれ『ご縁』があるのかしらね」


ウィスティアが、楽しそうに微笑む。

「風の子、とか?」


「……土も、悪くない」

ルートミアが静かに言う。


フレアリアは一瞬だけ目を瞬かせてから――

くすっと笑った。

「どうなるかは……あの子たち次第かな?可愛いもの好きそうだし」


ルーナフィリスは何も言わず、ただ静かに紅茶を口に運んだ。

その視線の先には、変わらない日常を生きる者たちの姿がある。


そして――まだ、誰も知らない

『もふもふ』な未来もあるかもしれない。


庭園には穏やかな時間が流れている。

女神たちの笑い声が、風に乗って広がっていく。


遠く離れた屋敷では静とセリナが

あかねとツキと一緒に、何気ない日常を過ごしている。


その日常がどれほど尊いものなのか

女神たちは静かに見守っている。


そして、これから起こるかもしれない

新しい出会い、それもまた楽しみに。

イメージソングを作成してみました。

もし興味を持って頂けましたら、曲を聴きながら読んでくれたら嬉しいです。

物語の方も順調に書き進めていますので宜しくお願い致します。

https://suno.com/@10monoshin8


カクコムでも先行掲載しています。

もし続きが気になって読んでいただける方が居たら下記のページでお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/822139842423376578

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