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観測者に見守られる屋敷で生きることにした ~静は世界を支配しない~  作者: 灯乃しんわ
第七章 静かな日常が世界に届く

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第二話 重く動き出す世界と、あたたかな時間

夜明けの鐘が鳴り終わるよりも早く――

ルミエール王国の王都中央

炎輝聖殿の最深部にある教会中央監察局の会議室には

すでに人が集められていた。


外はまだ朝靄に包まれてれ、街には人影もまばら

静かな朝の空気が漂っている。

だが室内の空気は、静まり返りながらも、張り詰めていた。


半円形に並ぶ石造りの席に監察官、上級司祭、記録官たちが着座する。

誰一人として雑談を交わす者はいない。

皆がこれから始まる会議の重大さを理解している。


「……火属性神殿より、正式な神託を確認」

議長役を務める老監察官が低く告げた。


「内容は――焔守護竜ほむらしゅごりゅうの誕生」

会議室に静かなざわめきが走る。

それは動揺ではなく、この事態が持つ重みを

即座に理解した者たちの反応だった。


守護竜の誕生

それは世界の秩序に大きな影響を与える出来事だ。


「本件は、火属性に限った問題ではない」

別の監察官が続ける。


「守護竜という存在そのものが、世界規模での影響を持つ」

議長は小さく頷いた。


「よって――

 本件は教会中央監察局権限による緊急事態案件として扱う」

数名が、息を呑む。


「支配エリアコアを使用する」


一瞬、室内が静まり返った。

支配エリアコアは本来、国家運営や領域維持のために用いられる中枢装置であり

遠距離通信への転用は、世界的危機の際にのみ例外的に許可される。

それを使用するということは

それだけこの事態が重大であることを意味していた。


「魔力消費は膨大になります

 魔石の備蓄も、相当数を消費することになるでしょう」

 記録官が確認する。


「承知の上だ」

議長は即答した。


「神託が下りた以上、出し惜しみは許されん」


命令が下る。


「グランヴェル帝国――地晶大殿へ緊急連絡」


「セレニア自治連邦――水環聖殿、風巡神殿、双方の上層部へ」


「冒険者ギルド中央にも通達を。該当地域での竜種討伐を即時凍結する」


書記官の羽根ペンが忙しく走り、インクの音が静かな室内に響く。


「各神殿には、午後より合同会議を実施する旨を伝えよ。

 詳細はその場で共有する」


床下深くから低い振動音が伝わってくる。

支配エリアコア起動準備

結界紋が淡く発光し、複数の大型魔石が次々と配置されていった。


それは世界が本気で動く時にしか見られない光景だった。

魔力の流れが変わり、空気が震える。


この朝――

世界はまだ姿も知らぬ焔守護竜を前に

すでに最大限の重さで判断を下し始めていた。


◆◆◆


その頃の静たちは――


屋敷の奥にある温泉浴場から、柔らかな湯気が立ちのぼっていた。

石張りの床と広めに取られた浴槽

実用性を重視しつつも、どこか落ち着く空間

窓からは朝日が差し込み、湯気が朝日に照らされて幻想的な光景を作り出している。


浴場の入り口近くで静は腕を組み、少しだけ様子を窺っていた。


「……大丈夫そうだな」


中から聞こえてくるのは、水音と楽しげな声

静はそれを確認すると、邪魔にならない位置へと下がる。

入るつもりは、最初からなかった。あかねの初めての入浴を、女性陣に任せたほうが安心だと判断したからだ。


浴場の中ではセリナたちが、あかねの初めての入浴を見守っていた。

「あかね、ゆっくりで大丈夫ですよ」

セリナが優しく声をかける。


「きゅ……?」

あかねは少し緊張した様子で湯船の縁に立っている。

大きな瞳が湯面をじっと見つめている。


「無理しなくていいのよ」

アリアが穏やかに言った。


そっと前足が湯に触れる。

――ちゃぷ

小さな波紋


「……きゅ?」

一瞬の戸惑いの後、あかねの表情がゆるむ

温かい

気持ちいい


 「嫌じゃないみたいね」

 リーアが微笑む


 あかねは湯の中へと身を預け、もふもふの毛並みをふわりと浮かせた。

 

「きゅぅ……」

 安心しきった声


「……気に入ったみたいですね」

 ミレイアが静かに言う。


浴槽の縁ではツキがじっと様子を見守っていた。


「にゃ」

短く鳴いて視線を逸らさない。


――ちゃんと見てるから

そんな『お姉ちゃん』の顔だった。


あかねはツキの方を見て小さく鳴く

「きゅ……」


そして、そのままセリナの腕の中で力を抜いた。


湯気の中ではやさしく、穏やかな時間が流れていく


「本当に、可愛いわね」

 フィアが嬉しそうに言う


「ええ。こんなに素直に受け入れてくれるなんて」

セリナも微笑む


あかねはセリナの腕の中で、気持ちよさそうに目を細めている。

その姿はまるで赤ん坊のようだった。


その頃、屋敷の外で待つ静は

中から聞こえる笑い声に、ほんの少しだけ表情を緩めていた。


「……良かったな」


世界が重い判断を下し始めていることを

この場所だけはまだ知らない。


遠く離れた王都では、支配エリアコアが起動し

世界中へと緊急連絡が送られている。


ここにはその緊張感は届かない

穏やかな日常がここにはある。


それがどれほど尊いものなのか

静はまだ知らない。

イメージソングを作成してみました。

もし興味を持って頂けましたら、曲を聴きながら読んでくれたら嬉しいです。

物語の方も順調に書き進めていますので宜しくお願い致します。

https://suno.com/@10monoshin8


カクコムでも先行掲載しています。

もし続きが気になって読んでいただける方が居たら下記のページでお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/822139842423376578

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