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観測者に見守られる屋敷で生きることにした ~静は世界を支配しない~  作者: 灯乃しんわ
第六章 静かな歩みと結ばれた縁

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第四話 名もない甘味と静かな気配

フォルツでの観光と買い出しを終えた翌日。


朝の光が柔らかく差し込む食堂では、いつもより少しだけ賑やかな空気が流れていた。アリアたち四人が滞在しているため、普段よりも人数が多く、テーブルには活気がある。

朝食を囲みながら、昨日の街での出来事や、これからの予定について軽く話が交わされていた。


朝食を終えると、静とセリナは台所に立ち、並んで調理の準備を始める。

「今日は、昨日買った果物で甘味を作ってみよう」


静がそう言うと、セリナは嬉しそうに頷いた。

「はい。とても楽しみです」


足元ではツキが、まるで“味見役は任せて”

と言わんばかりに、二人の周りをうろうろしていた。


「にゃ、にゃ」


その様子に、静は思わず笑う。

「まだ始めてもいないよ、ツキ」


「先に準備を始めていて、アリア達を送ってくるから」

と静は屋敷の外へ向かった。


その頃、アリアたちは屋敷の外で装備を整えていた。

「今日は、まだ解放されていない空白地帯の調査ね」


「危険そうな場所には近づかない方針で、軽く地形確認だけよ」

とリーナが補足する。


「そうね、もし何か良い薬草があれば、植生も知りたいから採取もしましょうか」

とミレイアが提案する。


「任せといて♪いい物見つけて、静達のお土産にしようっと」

と軽く答える。


静が屋敷の外に来て、支配エリアコアの近くまで転移で送り届ける。

「何かあったら、すぐ戻ってきて」


「ええ。無理はしないわ」


そうしてアリアたちを見送ると、静は再び屋敷へ戻った。


台所では、セリナが昨日買った果物を丁寧に並べていた。

紫色の果実、赤みがかった小さな実、そして乾燥させた果物など

様々な種類が並んでいる。


「まずは、この淡い紫色の果実ですね」


「アメシリアって言うんだったかな?」


「はい、アメシリアですね。煮詰めると香りが立って

 ジャムや焼き菓子に使われます」


「そっか。じゃあ、まずジャムを作ってみよう」


「その後で……」

静は少し考えてから言った。


「タルトにしてみようか」


「タルト、ですか?」


「甘い生地の器に果物をのせて焼くお菓子だよ」


「まあ……素敵ですね」

セリナの声が自然と弾む。

こうした新しいお菓子を作ることは、彼女にとっても楽しみの一つだった。


ツキも嬉しそうに

「にゃぁ、にゃぁ」

と鳴いた。


足りない材料は【再購入】で補い、二人は並んで調理を始める。


鍋で煮詰められる果実の甘い香りに誘われて

ツキは台所を行ったり来たりしていた。


まるで指揮官気取りのように。

「にゃ、にゃ」


「分かってる分かってる」

静は苦笑する。


やがて、オーブンから甘い香りが広がった。


「……焼けたみたいだね」


取り出されたのは、艶やかな紫色の果実が並ぶ【アメシリアのタルト】だった。

表面には果実の果汁が艶やかに光り、香ばしい生地の香りと果実の甘い香りが混ざり合っている。


「とても良い香りです……」

セリナが目を輝かせる。


その瞬間


「にゃぁ! にゃぁ、にゃぁ!」

ツキが静の足に飛びついてきた。


「まだ熱いから駄目だよ」

静は優しく止める。


「最初のはお供えするから、次のを待ってね」


「……にゃぁ……」

ツキは分かったのか、少し残念そうに鳴いた。


その様子を見て、セリナは小さく微笑む。

「タルトはまだですが……こちらなら」


ジャムを薄く塗ったパンを差し出すと、ツキは嬉しそうにすり寄った。

「にゃっ」


セリナの手に頬を擦りつけながら食べる姿に、静は苦笑するしかなかった。


◆◆◆


一方その頃

小川のそばで休憩していたアリアたちのもとへ

斥候に出ていたフィアが戻ってくる。


「アリア〜、危なそうな魔獣はいなかったよ!」


「それで?」


「向こうに、遺跡っぽいのがあった!」


「遺跡……」

アリアは少し考える。


「今日は時間が足りないわね」


「神罰が下った国の遺構かもしれないけど……」

リーアが言うと、ミレイアも頷く。


「今は目的が違いますし」


「そうね」

アリアは決めた。


「一度戻って、静に話しましょう」


こうして一行は、支配エリアへ引き返すことにした。


◆◆◆


少し前


礼拝堂では静が小分けしたタルトを籠に入れ

祭壇に置いていた。

「セリナ、ここに置いておくね」


「ありがとうございます、静様」


静とツキが退出した後、セリナは祈りを捧げる。

(静様と一緒に作った【アメシリアのタルト】です)


日常の報告を終えて目を開けると――

籠は、静かに消えていた。


「……気に入っていただけると良いですね」

セリナは微笑み、礼拝堂を後にした。


その頃、静はマップを見ていた。

「……アリアたち、戻ってきたみたいだね」


支配エリアに四つの光点が入ってきている。

 

「迎えに行ってくるよ」

静は迎えに行くため転移する。


残されたセリナとツキは、皆が戻るまでにお茶の準備を始めた。

「お茶の用意をしましょうか」


「にゃ」

ツキは役に立っているつもりで、誇らしげに鳴いた。


静が転移で向かうと、ほどなくして合流できた。


「お帰り、無事でよかったよ」


「ただいま、無理はしない方針よ」

とアリアは微笑む


こうして一行は屋敷へ戻る。


◆◆◆


午後のティータイム。

テーブルには、先ほど焼き上げた【アメシリアのタルト】が並べられている。

艶やかな紫色の果実が美しく並び、見た目にも華やかだ。


「これ、美味しい……!」

フィアが真っ先に声を上げる。


「香りがすごく上品ね」

リーアも感心する。


「……売り物にできる位美味しいわ」

ミレイアは真顔だった。


「……」

アリアは無言で目を閉じ笑顔で味わっていた。


「にゃぁ」

ツキは一口もらって満足そうに鳴いていた。


その場で、フィアが思い出したように遺跡の話をしだす。

「ねえねえ、遺跡があったんだよ!」


「遺跡?」

静は少しだけ興味深そうに目を細めた。


「急ぐ必要はないけど……安全に行けるなら

 今度見てみたいな」


「それなら安全に調べる為に

 先に周囲の支配エリアコアを解放した方がいいわね」

とアリアが提案する。


「うん、それなら危険も減らせる」


自然な流れで話はまとまった。


こうして次の目的地が静かに決まる。


――誰も知らないまま

また一歩、世界に近づきながら。

イメージソングを作成してみました。

もし興味を持って頂けましたら、曲を聴きながら読んでくれたら嬉しいです。

物語の方も順調に書き進めていますので宜しくお願い致します。

https://suno.com/@10monoshin8


カクコムでも先行掲載しています。

もし続きが気になって読んでいただける方が居たら下記のページでお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/822139842423376578

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