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観測者に見守られる屋敷で生きることにした ~静は世界を支配しない~  作者: 灯乃しんわ
第五章 静かな日常に役目が宿る

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第二話 触れてはならない選択

王都ルミエール、中央区画

教会と王国が共同で使用する会議室には、重く澱んだ空気が満ちていた。

石造りの壁、高い天井、そして重厚な扉

この部屋で決められることは、しばしば国の運命を左右する。


長い卓を囲むのは、教会上層部の司祭たち、王国の高官

そして冒険者ギルドを代表する一人の女性――

フレイア・ノートである。


卓の中央には、一通の報告書が置かれていた。

《ルミナ・ヴェール》が提出し

冒険者ギルドマスターの名で正式に回付されたものだ。


「……空白地帯に、上位支配エリアコア」


王国側の高官が、報告書から目を離さぬまま低く呟いた。

「しかも女神ルーナフィリスの加護を受けた地だと?」


教会側の老司祭が静かに首を横に振る。


「文献ではほとんどが口伝のみ……

 だが、今回の神託と一致している」


ざわめきが抑えきれずに広がった。


「その地を"所有"する者が実在するということか」

「しかも、そこに聖女がいる?」

「教会として、接触すべきではないのか」


声が強まる

それを静かな一声が制した。


「待ってください」

フレイアだった。

背筋を伸ばし、表情を崩さぬまま、落ち着いた視線で一同を見渡す。


「冒険者ギルドが確認できているのは、報告書に記された事実のみです。

 それ以上の情報は意図的に伏せられています」


王国側の高官が眉をひそめる。

「なぜだ?」


「禁忌に触れるからです」

即答だった。


「観測者案件において、踏み込みすぎた接触は

 過去、幾度も取り返しのつかない結果を招いてきました」


教会側に短い沈黙が落ちる。


「……確かに

"知ろうとした"ことで滅びた記録は……存在する」

老司祭が、重々しく口を開く。


フレイアはその沈黙を急かさない。

(……だからこそ、慎重に。慎重に、ね)


内心でそう繰り返しながら、静かに言葉を続けた。

「提案があります」


一同の視線が集まる。


「この件は正式に、観測者案件として凍結してください」


会議室がざわめいた


「凍結だと?」

「何もせず、放置しろというのか」


「放置ではありません」

声の調子は変わらない。


「観測のみを継続します。

 こちらから接触はしない、ただし――」


わずかに間を置く


「相手側から意思表示があった場合

 その意志は、最大限尊重する」


王国側の高官が腕を組んだ。

「都合が良すぎる」


「いいえ」


フレイアはまっすぐに見返す。

「それが、唯一"何も壊さない選択"です」


教会側の老司祭が、深く息を吐いた。


「……異論はある。だが、否定はできん」

「観測者の名を冠する以上、我々は、慎重であるべきだ」


やがて、決が採られた


満場一致ではない

だが――


「観測者案件は凍結」

「こちらからの接触は行わない。

 相手からの意思表示があった場合のみ、対応する」


それが正式な決定となった。


会議が散会し、人影がまばらになる中

フレイアは、誰にも聞こえぬほど小さく息を吐いた。


(……本当に……胃にくるわ)


それでも

この判断が、どこかの誰かの日常を守るなら

踏み込まなかったことこそが、最善だったのだと――


フレイア・ノートは静かに席を立った。


フレイアは、会議室を後にしながら、ふと思った。


(……いつか、会えるのかしら)


その答えは、まだ誰も知らない。

イメージソングを作成してみました。

もし興味を持って頂けましたら、曲を聴きながら読んでくれたら嬉しいです。

物語の方も順調に書き進めていますので宜しくお願い致します。

https://suno.com/@10monoshin8


カクコムでも先行掲載しています。

もし続きが気になって読んでいただける方が居たら下記のページでお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/822139842423376578

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