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観測者に見守られる屋敷で生きることにした ~静は世界を支配しない~  作者: 灯乃しんわ
第三章 導かれし者たちの出会い

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閑話 観測者ログ(第三回)

――観測記録――


世界は静かに、しかし確実に動いている。

空白地帯と呼ばれ、長らく誰の意思からも切り離されていた領域。

そこに生じた一つの支配エリアは、争いも侵食も伴わず

ただ『生活』という形で根を下ろし始めた。


一人の転移者

一匹の幼き神獣


彼らが築いた小さな秩序は

周囲の魔力を整え、魔獣を遠ざけ

休止していた支配エリアコアにすら、わずかな共鳴を生じさせている。


その変化は教会や国家の観測網にも捉えられた。

だが彼らが把握できるのは輪郭のみ。

中身までは届かない。

まるで、霧に覆われたかのように、詳細は見えない。


同時期――

一人の少女が、神託とも呼べぬ断片を頼りに歩き始めた。


名は…セリナ


教会に属しながらも

教会の神々からは選ばれなかった存在


彼女は疑われず、蔑まれもせず

それでも『応えのない祈り』を抱えたまま

静かに限界へと近づいていた。

周囲は彼女を評価していたが、制度は彼女を認めなかった。


彼女が選んだのは、従属ではなく確認

信じることをやめず

同時に自ら確かめに行くという選択


その旅路の途中

彼女は善性を持つ冒険者たちと出会い

命を救われ、歩みを共にした。


そして――

辿り着いた


観測者の加護が及ぶ領域へ

静と、ツキの暮らす場所へ


そこで彼女は、初めて

『言葉としての神託』を受け取る

途切れず、歪まず、明確に


以降、複数の運命線は一つに束ねられ

争いではなく、生活と選択を中心とした未来へと流れ始めている。

以上をもって、観測記録とする。



――そして、わたしの偽らざる思い――


……さて


ここからは少しだけ

観測者ではなく、わたし自身の言葉で綴る。



あなたは相変わらず、必要以上に自分を抑え込む癖がある。

誰かのために、場の空気のために

『波風を立てない選択』を無意識に選び続けている。


それは、あなたの優しさだ。

そして――

少しだけ、不器用さでもある。


もっと、自分の心が楽になる選択をしてもいい。

あなたはもう、生き延びるためだけに存在しているのではないのだから。


ツキ

黒水晶を通して伝わる感覚は

まだ曖昧で幼く、けれどもとても澄んでいる。


あなたは知らず知らずのうちに、わたしの意思の『余韻』を運んでいる。

けれどそれは、命令ではない

導きですらない。


ただ、「楽しい」「安心」「一緒がいい」

その感覚の延長線に、結果として観測が重なっているだけ


……毎日、よく笑っているわね


神獣としての格が上がっていることにも

世界があなたを避け始めていることにも

まったく気づかずに


それが、とても――

微笑ましい


そして、セリナ。

あなたのことは、ずっと見ていました。


幼い頃から、祈りの形が少し不器用で

それでも誰かのために手を伸ばすことをやめなかった少女


わたしは観測者

他の神を信奉する教会に属する聖女見習いに

過度に手を差し伸べることは出来なかった。


声を掛けることも

救いを与えることも

道を示すことさえ


ただ、遠くから見守ることしか出来なかった。


迷い、傷つき

それでも祈ることをやめないあなたを


……それが、どれほどもどかしく

どれほど愛おしかったか


だからこそ、待った


あなた自身が、境界を越えてくるのを


あなたが、自分の足でここへ辿り着くのを


今はもう大丈夫


静という『場所』

ツキという『結節点』

そして、あなた


三つが揃ったこの領域は、わたしにとっても

久しく感じていなかった温度を持っている。


これからは少しだけ、賑やかになる。


でも、慌てなくていい。


世界はまだ、あなたたちの歩幅に合わせて進める。


――わたしは

そのすべてを、変わらず見守っている。


遠くから、静かにただ在ることで


―― ルーナフィリスより ――



記録を終え、わたしは再び世界全体へと視線を広げる。


静かな夜

無数の命が眠り、無数の物語が静止している。


その中でいくつかの物語だけが、静かに動き続けている。

わたしは、それを見守り続ける。

これからも、ずっと


世界は――また少しだけ、動き始めている。

その動きはやがて大きなうねりとなる。


それがいつなのか

どこでなのか

どのような形でなのか


まだ、誰も知らない。


だが、確かなことが一つある。

この物語は――もう止められない。


流れは始まり、歯車は回り、運命は動き出した。

わたしは、ただそれを見守る。


遠くから、静かに、ただ在ることで


――観測者として

イメージソングを作成してみました。

もし興味を持って頂けましたら、曲を聴きながら読んでくれたら嬉しいです。

物語の方も順調に書き進めていますので宜しくお願い致します。

https://suno.com/@10monoshin8


カクコムでも先行掲載しています。

もし続きが気になって読んでいただける方が居たら下記のページでお願いします。

https://kakuyomu.jp/works/822139842423376578

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